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2012-08-09 06:52
10月解散、11月選挙が本命に
杉浦 正章
政治評論家
「近メシ代議士」という言葉がある。自民党の江崎真澄らがよく「近いうちにメシを食おう」と言ったものだ。だが「近い将来メシを食おう」という表現はない。解散も、いくら何でも「近い将来」では、鬼が笑う来年のことになってしまう。なかなか実現しないから「近メシ」は、永田町では単なる社交辞令だが、今回の「野田の近メシ」は果たして実現するか。「するしかない」とみる。ではいつかということになるが、本筋は10月臨時国会冒頭解散・11月選挙だろう。解散・総選挙がそれ以上に遅れる可能性はまずない。政治を読むにはトータルで読まなければならない。今回の首相・野田佳彦の対応は極めて巧みであった。両院議員総会でまず、首相としては解散の確約ができないことを印象づけた。「解散は首相の専権事項、大権として、解散の時期を明示することは、どんな事情があってもできない。先例もないし、あってはならない」とまで言い切って、谷垣との会談では「言わない」という伏線を敷いた。批判の台頭を未然に抑える作戦に出たのだ。政治家がずるいことには、その直後に野田は谷垣に電話で「近いうちでどうですか」と持ちかけている。そして会談に臨み、発表は「3党合意を踏まえて、法案は早期に成立を期す。成立した暁には近いうちに国民に信を問うと確認した」となる。野田側は自民党総裁・谷垣禎一の主張する解散を「確約していない」と言えるし、谷垣側は「確約」と解釈できる。現に「これが確約でなければ何なのか」と発言している。
今回の党首会談の焦点は、密約があったかどうかだ。公明党代表・山口那津男の参加はたったの5分で「差別」されたことになるが、3大政党ではなく2大政党だからしょうがない。野田と谷垣が幹事長を追い出して2人だけで30分間何を話したかだ。密約するために決まっている。おそらく谷垣が「今国会解散を言ってくれ」と詰め寄り、野田は「党内が持たない。勘弁して」と言う感じであったに違いない。それでもなお合意に達せられたのは、野田も谷垣も消費増税法案を成立させ、財政危機を回避したいたいという“根っこ”の部分があったからに他ならない。とりわけ谷垣は、ここで処理しない限り、自民党政権ができても最大のお荷物が残ってしまうのだ。密約は、まず「臨時国会以降に解散を遅らせない」というところであったのではないかと思う。すくなくとも「早期解散あうんの密約」はあったのだ。
この両者の共通項の上に立ってさらに物事を突き詰めれば、二つの重要ポイントが浮かび上がる。一つは定数是正であり、もう一つは党首選挙だ。谷垣は会談後定数是正について「今国会中に当然やらなければいけないと思っている」と発言している。衆院の「1票の格差」を是正する選挙制度改革関連法案が成立していないことには、総選挙に突入しようにもできないのだ。問題は「0増5減」を会期末までに実現した場合でも、なお時間がかかることだ。区割り審議会が区割りを決めなければならないのだ。それには3か月、急がせた場合でも2か月はかかる。会期切れ9月8日までに法案を成立させても、選挙ができるのは11月だ。したがってここで難しくなるのが、今国会会期末解散なのだ。法案を通しただけでの解散では、世論の反発も避けられない。もう一つの党首選挙は、9月21日が民主党、22日が公明党、23日が自民党だ。野田も谷垣も再選を狙うとみられる。まず野田のケースから見ると、代表選前の今国会解散では再選が不可能となる。なぜなら民主党が半減という情勢調査の卦(け)が出ているからだ。半減をもたらした代表が再選されることはまずない。したがって野田にしてみれば代表選後の解散しか選択肢がないのだ。
一方で、谷垣はどうか。谷垣も今国会解散の確約に追い込めなかったことで党内の反発は避けられない。しかし当初の反発が長続きするだろうか。冷静に考えれば結局は消費増税法案を成立させたことが評価される流れとなってくるのだ。既に長老らにも谷垣支持の動きが生じている。町村信孝と安倍晋三の候補2人を抱える町村派オーナーの森喜朗が谷垣再選に傾いている。「今のところ、どう見ても谷垣さんしかいない。(総裁就任から)3年我慢してやってきたし、 瑕疵 ( かし ) はない」と公言している。消費増税法案をほごにすれば、森は反転しただろう。成立させたのだからますます「ういやつ」ということになる。したがって自民党幹事長・石原伸晃も、前政調会長・石破茂も、9月に勝負に出るかどうかは思案のしどころとなる。党首選挙を意識すれば、野田、谷垣双方にとって消費税成立と臨時国会での解散はメリットが出てくるのだ。こうして焦点の解散は、筆者が7月17日に大胆にも「野田・谷垣再選で“臨時国会解散”」を書いたとおりの展開となって来たのである。政治だから紆余曲折もあるし、一寸先は闇で、何があるか分からないが、今はそういうことだ。読売もそう書きはじめた。出番が来たと高笑いしていた小沢一郎は、不信任案否決でぎゃふんとなった。
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