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2012-09-13 10:14
「世界の常識」に無知な日本社会の「ノンキ節」
山田 禎介
国際問題ジャーナリスト
中国の国営テレビが9月11日から尖閣諸島の天気予報を始めたそうだが、これについて思い出すことがある。冷戦時の1960年代、当時の西ドイツのテレビでは、東ドイツ地域の天気予報を当然のように放映していたことだ。しかも東ドイツ地域を「中部ドイツ」と呼んでいた。また当時の西ドイツ・マスコミには「いまだ回復されざる東部ドイツ」という表現も見られた。この場合の「東部ドイツ」とは、プロイセン(プロシャ)時代のドイツ帝国の版図を含んでいた。これに対し、東ドイツとその親権者である当時のソ連は「西ドイツ報復主義の表れ」と非難を続けた。しかし、歴史はやがて冷戦体制終結へと向かい、東西ドイツは念願の「再統一」を果たした。
今回、中国が尖閣諸島の天気予報という手段に出たことは、国際社会における、ごく初歩的な「スマートパワー」の動員であるといえるだろう。世界では常識である。しかるに日本のテレビ各社が、沖縄地方の天気予報について、沖縄をはっきり明示するかたちで放映を始めたのは、沖縄の復帰後、かなり経ってからのことだったと記憶する。オーストラリア先住民アボリジニーは、未開時代、ものを所有するという観念を持たず、すべて分かち合いで生きていた。これはある意味、厳しい生活環境での「生きる知恵」であった。島国の日本が、歴史的に国境に対する意識が低かったのは、このアボリジニーの「いたいけな生きる知恵」とはかけ離れた、まさに異次元のノンキ節だったからではないか。
かつて、皇居観光に来たカナダ人旅行客が、皇居周辺の都心部の「酒の自動販売機」の前で酒盛りをしているのを、目撃した。「こんな便利なものがあるニッポンは、パラダイスだ!」と気炎を上げていたのには、複雑な気持ちを持った。彼らのいう「こんな便利なもの」は、さすがにまもなく規制で消えた。便利な機械類といえば、日本ではなぜ糊不用シール付き切手販売機がないのか。米国では銀行の現金支払機でもシール付き切手が買える。また環境問題で必須の空き缶つぶし回収機は、米欧で一般的だが、この便利な機械は日本では登場する気配もない。
「ノンキ節と過度の規制主義のないまぜ」が、現在の日本国の実態だ。主題に戻るが、国際社会ではごく初歩的なものがなぜ、日本では実行できないのか。また、相手側外国による対日報復措置が逐一、事細かに報道されるのをただ見るだけで、なんら対策を打ち出してこなかったのが戦後の歴代政権。これはもう、伝統のノンキ節社会を引きずっているからとしか思えない。
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