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2012-09-15 10:11
尖閣諸島への中国海洋監視船6隻来襲は序章にすぎず
北原 二郎
会社員
日本の尖閣諸島国有化に反発する中国が、9月14日尖閣諸島領海に海洋監視船6隻を差し向けてきた。報道によると、6隻同時に領海に侵入されたことに対し、日本の海上保安庁は驚きを禁じ得ないようである。ただ、8月25、26両日の拙稿でも述べていたとおり、東京都による尖閣購入(実際には国有となったが)、10月1日の国慶節のタイミングで、中国が次なる挑発に出る可能性が高いことは火を見るより明らかであった。先稿でも触れておいたが、「例えば数十隻の漁船を尖閣に差し向ける」事態も十分に想定しておくべきである。今回の海洋監視船6隻の来襲はあくまでも序章に過ぎないのだ。次は漁船団と監視船を同時に差し向け、漁船乗り組み員を島に上陸させる可能性もある。パラセル諸島やスプラトリー諸島において、中国が漁船とその保護に名を借りた海上監視船派遣を通じて、強引に実効支配を拡大・強化していることからも明らかである。
尖閣諸島は、陸上に港湾設備や灯台、ヘリポートなどの防衛設備を何も持たず、陸上に実効支配が及んでいない状態で、丸腰で海上にむき出しになっている。海上保安庁の監視船が巡視しているとはいっても、今回のような6隻同時の襲来の前には、多勢に無勢で無力であることを露呈した。ガラスのように脆い海上だけの「実行支配」なのだ。8月の香港活動家が漁船で潜入し、一時中国国旗を島上に掲げたことからも、これに数十隻の漁船が加われば何が起きるかは、想像に難くない。さらに中国は尖閣諸島沖の「領海」化を宣告し(9月10日)、国連に海図を提出して、国際社会への言論戦を進めている。海上での実効支配を奪うべく、今回は6隻の海洋監視船を差し向けて来たのである。彼らは周到に戦略を練り、準備をしている。一方日本外務省は、相変わらずHP等で「尖閣は日本の領土であり、領土問題は存在せず」との千篇一律の主張を繰り返すのみである。
では日本の取るべき対応は何か?詳細は先の拙稿でも述べたとおり、「国際世論を味方につける言論戦」の展開と「国際司法裁判所の活用」の2つがある。さらに、ここに喫緊の課題として、港湾施設、灯台の建設に加え、1979年に中国の抗議により撤去させられたヘリポートの建設といった実効支配の強化がある。今~来月にも起こりうる大漁船団による上陸行為を阻止するために、岸壁周辺への障害物設置などを速やかに検討すべきである。最後に、鳩山政権下で大きく損なわれた日米関係の立て直しである。これら4つの柱を国家戦略として組み立てることを置いて、他に中国と対抗できる方法はない。
「太平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)、たった四杯(隻)で夜も眠れず」とは、幕末ペリー来航に際して詠まれた狂歌である。国際環境の変化の中、日本政府はいつになれば本気で国家戦略を組むのであろうか。明治の志士はピンチをチャンスに変え、1905年にはロシアに日本海海戦で勝利するなど、我が国の国際的地位を大いに高めることに成功した。そうした鋭敏な国際感覚と日本の国家主権と守るという強い意思が、今まさに求められているといえよう。
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