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2012-09-25 06:54
重鎮の怒りで石破大苦戦、決戦で逆転敗北も
杉浦 正章
政治評論家
「苦戦度」で言うなら、前政調会長・石破茂がトップだ。議員票が寄りつかない。9月26日の総裁選投開票では第1回選挙でトップを取っても、不利な国会議員による決選投票で雪崩現象を作る勢いは出そうもない。おまけに永田町では、決選投票では元首相・安倍晋三と幹事長・石原伸晃が2・3位連合へ動くとの見方が強まっている。石破陣営は「地方票を無視していいのか」と訴えているが、石破に人望がなく、「無視していい」と言うムードになりつつある。自民党では昔から「爺(じじい)を怒らせると恐ろしいぞ」と言われてきた。田中角栄などは岸信介や椎名悦三郎など「爺」に気を遣いすぎるほど遣ったものだ。その爺達が石破に怒っている。元首相・森喜朗は「石破君は7回も党を変わっている。苦しくなると急に放り出す。気に入らなかったら党を捨てるようでは、しまいには国を捨てることにならないか」と口を極めて批判している。ここまでテレビで言うかというほどの発言だが、明らかに地方党員対策で石破の足を引っ張っているのだ。
確かに石破は「自民党→改革の会→自由改革連合→新進党→無所属→自民党額賀派→自民党無派閥」と転転と所属政党や派閥を渡り歩いている。森は、やはり長老の青木幹雄が石破嫌いである理由についても「2008年の総裁選の時人数が足りないから推薦人を貸してくれと言われて、3人貸して総裁選に出させてやったが、終わっても礼の電話一つかかってこないと言って怒っている」と暴露している。まさに「爺の好きな怨念の戦い」となっているのだ。その長老支配に反旗を翻して脱派閥支配を唱えているのが石破だが、どうも戦略を誤った感が濃厚だ。まず最初に派閥に影響力のある重鎮連中を“たらし込む”のが自民党総裁選だが、逆に反石破に回してしまった。自分も「不徳の致すところ」と認めている通りだ。決選投票では、森と古賀誠、青木は石原支持、麻生太郎と高村正彦は安倍支持というのが大筋の流れだ。石破はもとより党重鎮らの反石破感情を察知しており、政調会長を外されてから、懸命に地方を回って地方党員の人気を獲得した。テレビにも頻繁に出演してアピールしたのだ。
その甲斐あって、300票の地方党員票では、石破が4割を占めるに到っている。しかし、199人の国会議員票では30票台で伸び悩んでいる。一方で安倍は、地方票で2割、議員票で約50票。石原は地方票が1割程度、議員票40台半ばだ。こう見てくると、石破が初回投票で過半数を制することは不可能で、決着は決戦投票となる。初回投票で1位になることは確実でも、地方票を決選投票に影響が出るほどとれるかどうかが焦点の一つだ。小泉純一郎が橋下龍太郎を下した2001年の総裁選では、地方票が決選投票の流れを作ったが、今回は選挙方式が「総取り方式」から「ドント式」に変わって、地方選で圧倒することは困難だ。したがって、石破陣営が狙っているように、地方選の圧勝を決選投票に直結させることは極めて困難視されるに到った。おまけに近来まれに見るほど激しい派閥間の集票戦が展開されており、第1回投票の結果などが議員票に影響を及ぼす余地が少なくなりつつあるのだ。
したがって、決選投票では石破が、56年前に石橋湛山首相誕生の際岸が敗れたのと同じで、2・3位連合側に逆転されて、敗北する可能性が出てきているのだ。安倍と石原の2位争いが熾烈を極める背景にはその事情がある。これまでのところでは、議員票でも地方票でも安倍が石原をリードしていることは確かである。石原は党総裁・谷垣禎一を裏切った「明智光秀」批判が痛いうえに、選挙中も軽率な発言を繰り返すなど、重厚感に欠ける印象がマイナスとなっている。しかし、約25票の町村信孝票と、約20票の林芳正票や態度未定票がどちらに動くかなど不確定要素が多い。石原が最後の頼みとするのが森、古賀など重鎮によるとりまとめだ。党内では、森が中心となって投票直前に反石破票を石原にかなりの数をまとめるという見方が濃厚になって来ている。安倍、石原のどちらが2位に食い込むかは選挙直前まで予断を許さない流れだろう。
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