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2006-11-09 09:32
アメリカの中間選挙とイラク問題
坂本正弘
日本戦略研究フォーラム副理事長
アメリカの中間選挙は民主党の大勝利となったが、その大きな原因はイラク情勢であり、ラムスフェルド国防長官が辞任した。イラク戦争は当初理由とされた大量破壊兵器が発見されないことが問題とされてきたが、アメリカの世界戦略の中軸である民主主義の拡大が世界に正義と平和をもたらすという理由があった。3回に及ぶ国民投票は圧倒的多数の参加があり、特に危険を冒して選挙に向かう女性の姿は,イラクでも民主主義への道が進んでいるとの印象があった。特に本年は難産ながら、マリキ内閣も成立し、イラク軍と警察が整備され、イラクのテロも下火になるかと思わせた。しかし、その後の推移はテロの攻撃が止まず、内乱状況であり、米軍犠牲者数の増大が今回の共和党敗北の背後にあることは明らかである。軍事関与と民主主義と市場経済の拡大が、米国の世界戦略の背骨であるだけに、ことは深刻である。もちろん、この政策を提案したのはクリントン大統領であるだけに、民主党も威張れる話でない。
今度の中間選挙の結果、民主党が言うイラク問題の新しいコースはどんなものがあるかだが、イラクという宗教的部族国家に、まともに民主的国民国家を作るという戦略が失敗している状況がある。シーア派を中核とするイラク軍や警察を増強することは、スンニ派への弾圧を強めることであり、スンニ派のテロとそれへの反テロの悪循環となる。これに対応するには、クルド、シーア、スンニのそれぞれの部族ごとに国を作るしかないのではないかということである。各派ごとの国を作り、問題となる石油収入の分配は部族長の会議で合意できる決定をできないかと言うことである。中東の専門家に聞くとそんなに易しい話でないというが、『Newsweek』の10月30日号、11月6日号やJoseph Binden上院議員なども類似の構想を述べている。
アメリカがイラク問題から手を抜けないことは、アジア情勢にもろに影響している。金正日の核実験は米国の手詰まりを見越している面があるし、中国の大国振りも、米国が、6者会談などでアジアのことは任せている情勢が大きく影響し、台湾が一層寂しくなっているのである。日本がイラクに自衛隊を派遣しているのも、北東アジアの安全保障の上で日米同盟が必須だからであり、イラク問題は日本の問題である。ラムスフェルド長官の辞任の中で、米国が名誉ある出口を発見する動きが、上記の構想を含めて、加速するであろうが、イラク問題が世界の問題であることをアメリカの中間選挙は改めて示している。
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