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2012-11-27 07:05
小沢苦肉の「新党」もしょせんは“落穂拾い”
杉浦 正章
政治評論家
まるでミレーの絵画シリーズだ。「晩鐘」を聞きながら爺さんと婆さんが「落穂拾ひ」をやっている構図だ。聞いてもすぐ忘れるような政党を集めて、ひたすら選挙向けに、まるで水戸黄門の印籠のごとく「脱原発」を掲げて、「これが目に入らぬか」と意気込んでいるが、目に入らんのだ。名前は「日本未来の党」だそうだが、限りなく疑惑に満ちた「無罪の人」小沢一郎(70)や、政界つまはじきの亀井静香(76)、原発ポピュリズムの滋賀県知事・嘉田由紀子(62)らが集まっても、しょせんは“野合”であり、日本の未来を託すわけにはいかない。直撃を受けるのは、同じ第3極の日本維新の会だろう。第3極の分裂・共食いだからだ。それにつけても小沢の“寝技”は、冴えていると言えば冴えているが、“回天”の事業にはほど遠い。最近永田町には「小沢が最後の仕掛けをする」という観測がしきりに流されていたが、これだった。嘉田はかねてから、日本維新の会副代表・橋下徹が裏切って、大飯原発再稼働容認へかじを切ったことに不満があった。2週間前も嘉田は、橋下が脱原発に踏み切らないことに対して、「仲間を失った感じがする」と記者会見で語った。
小沢は抜け目なくこうした“亀裂”に目をつけたのだ。8月頃からあの手この手で接触を試みた。そうして11月24日の夜の秘密会談で「嘉田新党」に合意したのだ。「自分の党は解党してもいい」とたらしこんだのだ。嘉田も天下の小沢から持ちかけられては悪い気はしない。それに「無罪だから」と回りにも言い訳が立つ。しかし、そこには女性特有の「淺知恵」がある。小沢の狙いが分かっていないのだ。小沢の狙いはとりあえず「卒原発の看板借り」だ。看板借りとは、芸者が置屋から、屋号や営業権を借りることが語源だが、表向きの名目、見せかけをさす。嘉田は、大飯原発再稼働を“活用”して、「卒原発」で名前を挙げたが、政界で埋没した小沢は、それをさらに“活用”して、党首に祭り上げ、自分は国会議員団の代表として采配をふるうと言う形だ。まるで維新の会を乗っ取った石原そっくりの手法だ。橋下を利用して自らの政治的野心を達成しようとしている石原のやり口そのままだ。さすがに中央の政治家の“悪さ”は、並大抵ではない。自治体の長など手玉にとれるのだ。
小沢にしてみれば嘉田という女性党首を持ってくることにより、今流行の原発ポピュリズムをフルに活用できることになる。自分が訴えても聞く耳持たぬ有権者が、嘉田なら聞く耳を持つのだ。自らの胡散(うさん)臭ささを嘉田のオブラートでくるんで、落選必至のチルドレンの選挙対策に役立てようというのだ。こうして小沢は第3極にくさびを打ち込み、維新とは一線を画すことに成功したかに見える。しかし、ことはそう簡単にはいくまい。だいたい小沢は行き場所なしで膝を抱える亀井とうまくいくのか。クリーンが売り物のみどりの風は小沢のダーティイメージと混ざり合っていいのか。原発以外で消費増税、外交・安保、TPP(環太平洋経済連携協定)など焦点の政策はどうするのか。これらの問題を棚上げにして「脱原発」一点に絞って新党を結成しても、まさに非維新野合新党に他ならないのだ。そもそも弱小政党が集まってインパクトが生ずるのか。26日放送のNHKの世論調査では、政党支持率が小沢の生活0.9%、亀井の減税日本0.1%、みどりの風0%だ。朝日でも、生活2%で、後は0%。いくら「落穂拾い」をやろうとしても、落ち穂は拾われてしまってないのだ。それに今回は組織ゼロではとても戦えない選挙だ。市民運動を巻き込もうとしても、まず間に合わないだろう。
だいいち原発対策は、賢明にも自民党が3年間様子を見る方針で、最終的には「ベストミックスで、入原発」を図ろうとしている。責任政党として見事な対応だ。これに対して民主党は、脱原発を閣議決定出来ないままであったが、どさくさに紛れて最近閣議決定したようで、野田は「閣議決定した」とあちこちで吹聴している。他党は口を開けば脱原発だ。いまさら脱原発を唱えても、有権者には訴えない。嘉田が出張って珍しいだけだが、促成栽培はすぐに飽きが来る。メディアは、朝日が異常にこの脱原発新党をはやしている。今後「原発ゼロ」の“社是”達成のためには、悪魔とも手を結びかねない姿勢だ。したがって新党は、その実力以上に大きく見える可能性があるが、実態を見間違わない方がいい。小沢の最終的な狙いは「脱原発政権」にあるから、選挙後あわよくば「反自民脱原発政権」での連立を目指そうするのだろう。いくら衆愚の浮動層でも、これに気付けば投票しまい。おまけに野田や、石原が、小沢に乗るわけがない。したがって小沢には「晩鐘」の鐘が鳴っているのだ。おとなしく観念して落日に手を合わせた方がいい。
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