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2012-11-29 06:56
詭弁大王、暴言帝王、甘言老婆が勢揃い
杉浦 正章
政治評論家
選挙は弁論で訴えるしかない。したがって政治家の唯一の武器は弁論であるが、この選挙ほど詭弁、暴言、妄言、甘言、迷言がはびこっている例は珍しい。なぜかと分析すれば、前回ポピュリズム選挙で成功した民主党の例にならって、第3極が“衆愚”の浮動層を再びだまそうと狙っているからに他ならない。まさに大衆迎合選挙が展開されているのだ。日本は世界でもめづらしい知的水準の高い国民だが、偽政治家にころっとだまされる点では、世界有数の幼児性を兼ね備えている。幼児にさとすように欺瞞(ぎまん)性を解き明かす。
まず【口から出任せ大王】は日本維新の会副代表・橋下徹。みんなの党との候補者調整で迷った末「じゃんけんで決めよう」と渡辺喜美に持ちかけた。さすがにアジェンダ渡辺もびっくりしたとみえて、「そんなばかなことが許されるのか」と激怒、合流話は立ち消えとなった。代表・石原慎太郎が橋下に「じゃんけんで決めるしかないなぁ」と漏らしたのを、何でもパクってしまう橋下がつい口にしてしまったのが経緯のようだ。この橋下の発言は維新の特質を物語っている。つまり政策や理念などは必要ない。橋下と石原の人気だけで選挙に勝てるという、有権者を見くびった判断が背景にあるのだ。橋下は自民、民主の幹部の批判に対して「あー、この人たち、組織のトップとしてギリギリの判断をやったことがない人だなと思った」と反応したが、まさに「井の中の蛙大海を知らず」だ。自治体のトップの判断などは、政治のぎりぎりの場面の判断と比べれば、楽すぎてうたた寝しながらでも出来ることを知らない。それに、タレント弁護士だけあって、良くしゃべる。しゃべりすぎる。テレビで弁明していたのを聞いたが、軽くて長広舌をふるうのには閉口した。寸鉄人を刺すという言葉を知らない。優秀な政治家はすべてこれを信条としているが、橋下にはかけらもない。タレントたるゆえんだ。
次に【暴言帝王】は石原だ。「海岸に原発を造ってきたのは基本的な間違い。大津波が来るという指摘もあったのに、政府は聞かなかった」と宣うた。石原の特技は過去の発言をすべて忘れてしまうことにある。高齢者特有のビョーキではないかと思える。ついこの間まで原発推進の旗振り役を買って出て、「東京湾に立派な原子力発電所を作ってもよいと思っている」と公言し続けて来たのは、どこの誰かと言いたい。それとも「東京湾は湾であって海岸ではない」とでも言うのか。水がなければ冷やせないことぐらい小学生でも知っている。脱原発でなければ人にあらずという誤った風潮の中で「慎太郎よお前もか」と言いたい。ことあるごとに「私は暴走老人。死んでも結構と言うつもりでやっている」と、よわい80を逆手に取った発言を繰り返すが、高齢を理由に同情を買おうとするのは老人特有の“媚び”にすぎない。
【迷言大師】は亀井静香。日本未来の党に渡りに船とばかりに飛び乗って、「未来は勢力をどんどんでかくする出世魚。ビュンビュン跳ね回って日本の危機、世界の危機を救う」と誇大妄想発言。しかしその実態は行き場なしの自分の危機を救うものに他ならない。政界のつまはじきで膝小僧を抱えていたのに「亀ちゃんとりあえずはよかったなぁ」と褒めてあげたい。
何と言っても【甘言老婆】の滋賀県知事・嘉田由紀子の言い回し「このままでは日本は国家としての品格を失う」はひどすぎる。原発ゼロでは2流国になると「第3次アーミテージ・ナイ報告書」が警鐘を鳴らしている。2流国どころか、3流国の乞食となって、物乞いをすることになる。それで品格が保てるのか。「ドイツのように2022年にゼロを目指す」と言うが、ドイツのゼロは破たん寸前だ。再生可能エネルギーの技術の壁とコスト高に直面している。加えて送電網の整備にかかるコストに悲鳴を上げている。2000年に始まった固定価格買い取り制度によって太陽光発電が急速に普及したが、買い取りで財政が成り立たなくなったのだ。また電気料金の高騰で住民生活に大きな影響が及び始めた。日本も電気料金は大幅に上がり、企業も家庭も確実にやっていけなくなる。苦境に立ったメルケルは、太陽光発電の買い取り価格を20%から30%引き下げ、「3、4年後には中止する」と言い出した。それでもやれるというなら、嘉田はまさに亡国の甘言老婆だ。見る人はちゃんと見ている。日経電子版の調査によると、未来を66.5%が「政策の違いを無視した野合」と回答。第三極に「失望した」は77.7%だ。
【妄言の姫】はみどりの風共同代表の亀井亜紀子。同党から未来の党に移る3人が衆院選で当選したら「みどりの仲間として迎えたい」と、みどりに復帰させる方針を明かにした。いったん未来を名乗らせて当選したら復党するのではまさにヤドカリ。有権者をだますものでもある。未来が選挙互助会であることがはっきりした。
それに引き替えて【名言の爺さん】もいる。自民党副総裁・高村正彦だ。未来について「実態を見れば小沢新党」と言い切った。「小沢さんは評判が悪くなると、新党を作って目くらましをする。それが生き残りの手段」はまさに当を得ている。嘉田は小沢色を消すのに懸命だ。脱原発だけで時流に乗っている胡散臭い代表代行・飯田哲也に「小沢氏は無役」と言わせて、見え透いた逃げの一手を売っているが、時既に遅しだ。誰が見ても小沢新党と分かってしまうのだ。無役でも裏から手を打つ小沢の怖さを知らない。おまけに現在73~4人の候補のうち50人が小沢一派で、会計責任者まで小沢グループでは、小沢への救命ボート以外の何物でもない。これくらいはいくら衆愚の浮動層でも分かるだろう。
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