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2012-12-05 06:53
安倍自民が“石原暴走維新”と組む危険性
杉浦 正章
政治評論家
比較第1党の党首が首相になるのが憲政の常道であり、その意味から言えば、自民党が政権に復帰する流れは確かであろう。問題はその“強度”だ。第3極乱立で自公で過半数に達するのか。達すれば、参院のねじれ解消のための民主党との部分連合が視野に入る。達しない場合、どこと連立を組むのか。民主党と組むのか、日本維新の会と組むのか。民主党なら当面自公民路線の安定政権、維新なら乱気流下の超低空飛行だ。とくに暴走老人・石原慎太郎の入閣とでもなれば、暴言・放言ですぐに更迭騒ぎだ。「自公維」は確実に自民党にマイナス効果だけをもたらす。キーワードは241議席だ。自公で過半数を超え得るかどうかの分岐点だ。さらに言えば、安定多数の252に達するかどうかだ。これまでのところ、自民党が現有議席118を100以上増やす勢いだ。民主党は230を3分の1程度まで減らすだろう。したがって、自民党が、現有の21人以上は獲得する公明党と合わせれば、過半数を超える可能性はあるが、浮動票が依然5割前後に達しており、その動向によっては、政権の枠組みが大きく変化する可能性をはらんでいる。
まず自公が過半数を超えた場合には、自民党の選択肢は、民主党との連立ではなく、参院のねじれ解消を狙った部分連合を組むかどうかが焦点となる。自民党総裁・安倍晋三は党首討論で「率直に言って野田さんは好きだ。一緒に酒を飲んだら楽しいだろう」と、“粉をかける”発言をしている。しかし、民主党との連立となれば、明らかに安倍の右傾化路線と衝突する。安倍は「民主党は参院では4割が労組出身。日教組も力を持っている。官公労主体の民主党政権とは組めない」と明言しており、自公民連立には否定的だ。おまけに通常国会は、半年後の参院選挙を目指して与野党対決基調で推移する。総選挙で激突したあとでもあり、民主党と連立を組むことは極めて難しいだろう。加えて、先の自公民3党合意により、いわく付きの赤字国債発行法案は、本予算と一体処理の方向となった。重要なねじれ解消の理由の1つが消えた事になる。連立より部分連合が流れだろう。幹事長・石破茂も、選挙後の自公民の3党合意の枠組み維持について、「いいかげんな3党合意ではないので、維持していかなければ、参議院選挙までの間のねじれの解消はできない」と言明し、自公連立に民主党が政策ごとの部分連合で参加することに期待を表明している。この合意が出来れば、政権は1番安定するだろう。
問題は、安倍が維新と人脈的にも思想的にも近いことだ。安倍は憲法改正と尖閣問題で石原と極めて近い発想をしている。現に尖閣諸島に船だまりを作り、公務員を常駐させるという石原の“対中激突”提案に、同意している。安倍が夏頃から維新の橋下徹と接近して、かなり強い人脈を作り上げていることも確かだ。石原は党首討論で憲法改正を条件に自民党との連携に前向きな姿勢を表明している。しかし、維新との連携は極めて危険性を伴う。とくに「自公維連立」ともなれば、政権は数合わせは出来るものの、石原と維新チルドレンを抱えて、揺れに揺れるだろう。とりわけ石原が副総理格で入閣ともなれば、尖閣を核とする対中敵視、原爆保有、原発推進の“3大暴言”が政権を直撃する。新党結成でスポットの当たった石原を観察すれば、「原発フェードアウト撤回発言」や「公明党評価せず」発言など、後から訂正や陳謝に追われる発言の繰り返しだ。明らかに政治家としての柔軟性に欠け、“短絡性暴言症”ともいうべき高齢者特有の発言癖が見られる。都庁の記者クラブ程度を相手にしているうちは無事でも、政治記者の鋭い分析にかかっては、すぐに馬脚を現す。閣僚になれば1週間で暴言症が露呈して、通常国会は動かず、安倍は石原を罷免せざるを得なくなるだろう。発足早々で政権の枠組みに影響を与えるつまずききとなる。対中関係も回復不能状態に陥る。まず石原入閣は無理だ。
それでも安倍が「自公維」に向かうとすれば、平沼赳夫あたりを入閣させるしかあるまいが、危険度は減らない。「自公維」で3分の2議席を占めれば、参院で法案が否決されても、憲法の3分の2条項に基づき衆院で再可決が可能だが、この奇策も長続きするものではない。必ず参院選では手痛いしっぺ返しを受ける。石破が「今度の選挙で勝ってくる民主党議員は風に左右されない人たちだ。第三極は何を言っているのかさっぱり分からないので、そこと一緒にやるのはリスキーだ」と述べている通りだ。維新と組むくらいなら、たとえ労組が多くても「自公連立プラス民主部分連合」が一番適切だろう。加えて維新のブームは、石原の暴走、橋下の口から出任せ、チルドレンの迷走で、すぐに下火となり、参院選挙まで持つまい。維新にだまされて投票した「衆愚の浮動層」が初めて気付くのは、その段階である。民主党にだまされたケースと全く同じだ。したがって安倍が維新に傾くほど、自民党政権の危険度は高まる。石原は背中にくっついて離れない“おんぶお化け”そのものとなる。我が国の政党政治のためにも、もう二度と失敗は許されないことを、安倍は自覚しなければならない。
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