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2013-02-26 07:04
参院選はねじれ解消の公算大
杉浦 正章
政治評論家
「船を沈め釜を破る」と中国のことわざで、民主党代表の海江田万里が党大会で党再生への必死の決意を表明した。楚の項羽が秦軍と戦うにあたり船はすべて沈め、釜は壊し3日分の食料のみを持って、士卒に必死の覚悟をを示して、秦軍を敗走させた故事に基づく。しかし民主党にその団結は可能か。「抵抗野党に逆戻りせよ」と社会党への先祖返りを主張する輿石東から、自民党と変わらない保守勢力までを抱えている「寄り合い所帯」の現状は変わらない。「天の時は地の利に如かす、地の利は人の和に如かず」である。その党内の人の和もままならぬのに、ましてや参院選に向けた野党の大同団結などは絵に描いたもちだ。このままでは自公の過半数達成でねじれは解消することになる。民主党が哀れをとどめたのは、党大会に離党を理由に除名した議員らを来賓として招いたことだ。いくら野党の融和が必要だといって、生活の党や日本維新の会の、後ろ足で砂をかけて去っていったような連中に挨拶までさせたのだ。連合会長の古賀伸明が「一緒にあいさつをするのはどうも気味が悪い感じがする」と皮肉ったが、このあたりが正常な神経だろう。そんなことをしても参院選に向けての野党共闘が実現するめどなど全く立っていない。
ここで何とか野党共闘を実現して、自らを日の当たる場所に再び置きたいのが、生活代表の小沢一郎だ。自分も“後ろ足で砂組”にもかかわらず、いけしゃあしゃあと民主党に“指示”するような発言をしている。口を開けば「野党第1党の民主党が野党の大同団結を呼びかけよ」と言っているのだ。小沢の当面の戦略は7月の参院選で自公の過半数獲得を阻止することにある。阻止して政権を揺さぶり、ことあるごとに政局化して、政権交代を実現するところにある。しかし民主党308議席を達成して意気揚々だった小沢も、いまは衆院議員わずか7議席、衆参でたったの15議席の党首に落ちぶれた。にもかかわらず、小沢はめげない。めげない理由は過去にも全く同じ状況におかれて盛り返した“実績”があるからだ。1993年には新生党を36議席から55議席に、95年には新進党19議席を40議席にそれぞれ躍進させている。確かに野党には参院選に向けて候補者調整をしない限り、再び自公に敗れるという危機感が共通の認識として底流にある。小沢にとってみれば、これを“活用”して、政策より数を獲得するのが先だとばかりに、得意の分野に野党をひきづり込もうとしているのだ。これを「政局志向型野合」政治という。
しかし、小沢も、自分が前面に出てはできるものもできないことは理解しているようだ。だから、かっての子飼いである海江田をして、糾合せしめようとしているのだ。海江田が先に小沢の地元の岩手選挙区で「当選挙区で小沢一郎さんの協力を仰ぎたい」と発言したことで、「しめた。選挙協力のチャンスだ」と思ったに違いない。ところが、民主党は新潟と広島で生活に対立候補を立てることになった。小沢にしてみれば、一挙に舞台は暗転だ。そもそも小沢の野合戦略は成り立ちにくいのだ。なぜなら自民党はアベノミクスを錦の御旗として、その関連づけの上に日銀人事や環太平洋経済連携協定(TPP)を実現するという巧妙な戦略を描いている。野党も政策を問われており、まだ政権に落ち度がないのに政局化はできないのだ。日銀人事にしてみても「黒田東彦総裁」で株高・円安となった現実に棹さすことは、景気好転に水を差すようで難しい。それに、肝心の日本維新の会は、共同代表・石原慎太郎が小沢を毛嫌いしている。生活は脱原発、反増税、反TPPだが、これは維新の政策とことごとく反する。小沢自身も「石原さんはどちらかといえば旧体制の自民党に近い立場にいる。そうすると自民党と対立していこうという枠内には入って来れないかもしれない。そうでないグループでやらざるを得ないと思う」と維新との協力は無理との判断に至っている。
それでは、みんなの党はどうか。みんなもTPP推進であり、代表・渡辺喜美は「野合はしない」と言いきっている。こう見てくると、小沢がいくら海江田に“指示”をしても、民主党が野党の大同団結に動くことは困難だし、ましてや小沢が主導権を握れる場面は、よほどの大失政や不祥事が生じないと来ないだろう。小沢は「3年半後にまた参院選挙があるので、3年半後のダブル選挙というのが常識的に考えるとあり得ることだろうと思う。僕はそれを本当に最後の勝負にしたいと思っております」と述べて、長期戦の構えも見せ始めた。参院選での野党糾合は、よほどの「敵失」がない限り困難な方向となってきている。3年前に民主党政権が実現したのは、自公政権による「敵失」以外の何物でもなかったが、この敵失を民主党も小沢も待つしかないのが実情だ。棚から落ちるぼた餅を当分海江田も小沢も口を開けて待つしかない。
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