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2013-03-14 06:50
維新が安倍政権の補完勢力的色彩強める
杉浦 正章
政治評論家
ようやく日本維新の会が安倍政権の“補完勢力”としての実態を鮮明にし始めた。太いパイプは維新幹事長・松井一郎と官房長官・菅義偉だ。既に政策では憲法改正、道州制、成長戦略などキーポイントで一致しており、3月13日には維新共同代表・橋下徹が反対していた日銀総裁人事も賛成に回った。結局、大騒ぎした橋下も容認した。今後維新は参院選で民主党を食って一定数が進出、20人程度の勢力となる可能性がある。改憲を目指す首相・安倍晋三にとって、またとない“援軍”となろう。安倍は公明党と維新をバランスを取りながら政権運営して行くことになる。筆者は、FNNが安倍、菅と維新国会議員団筆頭副幹事長・山田宏、政調会長代理・中田宏との9日夜の極秘会談をスクープして以来、何のための会談か首を傾げていた。一国の首相が野党のトップならいざ知らず、下っ端役員と長時間会談したのである。会談がばれて、無視された国会議員団代表・平沼赳夫から「一国の首相と会うのだから、しかるべき手続きを取るべきだ」とこれまた、やっかみ半分の浅ましい批判が出たほどだ。
会談の真の目的は何だったかというと、維新と安倍官邸との国会におけるパイプ作りだ。というのも、山田も、中田も、松井の腹心と言ってもよいほどの関係であり、松井がこれもまた親しい関係にある菅を通じて設定したのだ。秘密会談では、日銀総裁人事に反対している山田と中田を安倍が説得する場面もあったことが想像される。総裁人事は、13日維新内部での投票に付され、14対10で賛成に回ることが決まった。結局両者とも反対に回ったが、この見通しも12日に松井が菅との会談で詳細に伝えたのであろう。橋下が最終的には認める方向であることも説明したようだ。こうした密接な連携の動きは、菅と松井の特殊な関係で成り立っているのだ。大阪の維新に対する安倍官邸の見方は、「陽動作戦ばかりが目立つ橋下よりも、松井の方が信頼が置ける」ということで定着している。“秘め事”などは橋下に漏らしたら、記者会見やツイッターですぐに公表してしまうから、いかんともし難いというのだ。
松井と安倍とは極めて親しい関係にある。というのも、まだ安倍が自民党総裁・首相に復帰できるなどという気配がつゆほどもなかった昨年春に、松井は安倍に対して「維新の代表になって欲しい」と要請したほどの仲である。なお自民党での復権に意欲を示す安倍は断ったが、両者はこれで切っても切れない信頼関係が出来上がった。安倍は腹心菅に松井との接触を継続するように指示して、菅はことあるごとに接触を継続した。接触は、政権成立後も続いた。1月11日に安倍が野党党首では最初に橋下と会談。2月17日に菅・松井会談、3月9日に前述の秘密会談、12日に菅・松井会談と表面化しただけでも極めて頻繁であることが分かる。ポイントは安倍官邸が共同代表・石原慎太郎や平沼を外していることだろう。石原や平沼はもともと最右翼的な立場にあり、捨てておいても憲法などでは自民党に同調せざるをえないと見ているのだ。それよりも実働部隊重視なのであろう。
安倍官邸の狙いは、改憲、集団的自衛権の行使などをめぐって公明党が慎重姿勢を表明していることから、これをけん制し、補う勢力としての維新票確保であろう。事実、最近の安倍は改憲の発議要件を定める96条だけでなく、将来的な9条改正にも意欲を示すなど、「安倍色」を一段と強め始めている。これに対して公明党代表・山口那津男は、集団的自衛権ではかねてから反対を基本に据えている。改憲についても予算委質問で安倍に対して「憲法99条で憲法尊重擁護義務を負っている」とけん制する一幕もあった。「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負ふ」と言う条項だが、官邸筋は「これにとらわれていては改憲できないということになる。まずは96条だ」と反論している。一方橋下は、参院選挙で自民党を過半数割れに追い込むことを目標に掲げて、全国的に候補者の擁立を図る方針であり、今後対決色を強めていくことが予想される。しかし、選挙情勢を分析すれば、今のところ1人区では自民党独走態勢が濃厚であり、2人区以上でも1人は押し込める可能性が強い。結局、維新が食うのは複数区で凋落著しい民主党ということになる。したがって、選挙の対立が決定的に選挙後の維新と自民の関係に作用することはないだろう。選挙後は菅と松井ラインが復活して、連携の動きが加速するものとみられる。
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