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2013-04-19 05:55
安倍は秋口にも原発再稼働に踏み切れ
杉浦 正章
政治評論家
4月18日発表の2012年度の貿易赤字が過去最大の8.2兆円に達した。最大の理由は円安と原発停止に伴う燃料費輸入の増大だ。経産省の試算では、燃料費は3兆円増大しており、この国富流出を放置すれば、確実にアベノミクスの成長戦略の足を引っ張る。原発再稼働は急務となった。おりから原子力規制委員会は原発の新規制基準案を策定、7月から施行される。とりあえず現段階で同規制に適合する原発は半数はある。首相・安倍晋三は安全基準に達した原発の早期稼働を遅くとも秋口には実現すべきであろう。原発再稼働問題は、民主党政権、とりわけ首相・菅直人が確信犯的に再稼働反対路線に踏み込み、再生可能エネルギーへの幻想をばらまいた。野田が大飯原発を再稼働させこれを修正した。自民党は総選挙最中から再稼働を唱え、圧勝した。首相・安倍晋三はオバマとの会談で民主党の原発ゼロ政策の破棄を伝達して、安全が確認された原発から再稼働することが、政権の基本方針である。
ところが、菅の敷いた脱原発方針の結果、原発50基中48基が、再稼働できないままとなっている。この結果、電力会社は燃料費がかさみ、東電が耐えきれずに電気料金に反映させた。近く全国の電力会社も値上げに踏み切る方針である。家計への圧迫は著しいものとなってきており、企業の海外移転は増加の一途をたどっている。とりわけ太陽光など再生可能エネルギーの電力会社買い入れは、ドイツが事実上破たん状態になっているにもかかわらず、世界でも最も高い価格水準で推進されており、これが電気料金にも跳ね返る。そもそも全電力の1%にも達さない上に、海の物とも山の物とも分からない再生可能エネルギーを、人気取りで原発に取って変えようとした民主党政権が諸悪の根源であったのだ。唯一の対処方法は火力発電を増やすことだが、それでは地球温暖化の原因になる二酸化炭素の排出が増えてしまう。国際社会が直面する課題に日本だけ背を向けることはできない。
こうした中で胸のすくような司法判断が出された。大阪地裁が16日、福井県や大阪府などの住民が、大飯原発の運転差し止めを求めた仮処分申請で、申し立てを却下したのだ。住民側の主張はことごとく却下された。その内容は、2基の原発が国の今の基準を満たし、想定を上回る地震が起きても安全は保たれると判断。活断層についても、具体的な危険性は認められないとした。「破砕帯」についても、現段階の調査では活断層と認めるに至っていないと指摘。安全の限界である11・4メートルを超える大津波が襲来する可能性は認められないとまで言い切った。東電福島第1原発事故後、原発の安全性を巡る初の司法判断であり、全国の原発訴訟の主張の根幹をことごとく否定したものでもある。総選挙で原発ゼロキャンペーンを行い敗北したマスコミ、とりわけ朝日新聞は司法判断でも敗退したことになる。さっそく社説で取り上げて「現時点で安全と断言するのは勇み足で期待はずれ」と噛みついているが、一定のイデオロギーの上に立った我田引水の社説だ。同社はもはや「不偏不党」を社の綱領から外すべきだ。
自民党は「再生可能エネルギーの導入に3年間努めて、可能性を見極める」としてきたが、政府部内でも「無理」との判断が主流を占めつつある。環境相・石原伸晃は経団連会長・米倉弘昌に「再生可能エネルギーは基幹エネルギーに位置づけることはできない」と明言した。安倍政権は参院選での争点化を避けるかのように見えるが、ここは姑息(こそく)な対応をすべきでない。再稼働を選挙公約として堂々と明言して、選挙に臨むべきだ。その上で、安倍は規制委基準に適合した原発の最終審査を早期に行い、再稼働に踏み切るべきだ。規制基準に基づけば、半数の原発は改善しない限り再稼働できなくなる。東北、東京、中部、北陸、中国、日本原電の計26基は、当面再稼働は難しい状況とみられている。しかし、沸騰水型炉ではない四国電力伊方原発3号機や九州電力川内原発1、2号機は早期稼働が可能となる。両電力は7月にも再稼働を申請する予定であり、早期に審査を済ませ、遅くとも秋口までには再稼働の許可を出すべきだ。これを皮切りに半数の原発を再稼働させれば、電力事情は確実に好転する。アベノミクスの成長戦略はこの決断なくして達成は不可能と見るべきだ。
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