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2013-05-28 06:19
橋下の弁明は逆効果:沈静化ならず
杉浦 正章
政治評論家
「愚人夏の虫。飛んで火に焼く」というが、維新共同代表・橋下徹の日本特派員協会での弁明は逆効果の一言に尽きる。しゃべればしゃべるほど“三百代言”の本質が浮かび上がる。民主党の海江田万里までが就任以来初めての名言を吐いた。「多弁を弄しているが、火を油紙で包むことはできない」。まさに火に油を注いだ。政府・与党は放置して我関せずを極め込むべきではない。対外的に橋下の“特異性”を発信しなければ、日本の政治家の全体像が危機に瀕する。橋下の記者クラブでの弁明のポイントは2つに絞られる。1つは米軍司令官に対する「風俗活用の勧め」を「法律上認められている風俗営業と言ったのに、買春と誤報された」としたこと。これは文脈から言って絶対に成り立たないのであって、朝日川柳が<変わるけど最初の言葉が本音でしょ>と切っているとおりだ。他の一つは「慰安婦制度は必要なのは誰だって分かる」を「私が容認していると誤報されてしまった」としたこと。つまり重要ポイントをすべて「誤報」のせいにしたのだ。繰り返しビデオで放映されているとおり、米軍司令官には買春を勧め、慰安婦の必要性を「誰だってわかる」と間違いなく発言している。言い訳もここまで白々しいとマスコミの方も「あぜん」とするばかりであろう。マスコミをフルに活用して成り上がった政治家が、都合が悪くなるとすべてを「誤報」とする。卑怯極まりない性格である。
発言の根底に存在する橋下の深層心理を分析すれば、どういう育ちかたをしたのか、人間の存在をセックスアニマルとしか見られない精神状態が存在する。まず女性を「性の道具」と扱っている。米軍司令官に風俗の活用について「真っ正面から活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをコントロールできない」と述べたことが如実に物語る。とりわけ戦場の兵士に至っては「交尾期を迎えた動物」としか見ていない。そこを根源としてすべての発言が構成されており、品性の致命的な欠落が浮かび上がるのだ。これは米軍兵士への侮辱となるばかりではない。ひたすら祖国の勝利を信じて飛び立っていった若い純真な特攻隊兵士や東南アジアの泥の中で朽ち果てた日本軍兵士らをも侮辱するものだ。とりわけ「米英も現地の女性を利用した。ドイツも韓国にもそういう施設があった」という主張は、低次元のナショナリズムに立脚した幼稚な反論である。子どもが「誰々ちゃんもやった」と言い訳するに等しく、国際的な“弁論の場”で通用する論法ではない。前日の民放テレビでは通用しても、国際的日本ウオッチャーの前では通用しない。ドイツ人特派員がテレビで「ドイツも日本も他国のことを言えない。国際的には誰も納得するものではない」と述べているとおりである。
韓国人特派員が「世界各国の女性の利用を持ち出すことはまさに弁護士だ。論点を変えて自分の立場を有利にしようとしている」と述べるのももっともだ。ただし三流弁護士であり、普通の弁護士ならこんな馬脚は現さない。外国特派員らに対して、得意の長口舌で丸め込もうとしている姿がありありと出ていたが、人の発言の分析で生きている記者という種族を侮ってはいけない。米ニューズウイーク誌の特派員が、記事の見出しについて「『橋下氏誠意のない謝罪』とする」と述べていたとおり、既に本質は見破られている。しかし発言が世界に発信されると、おそらく日本の有力な野党の政治家としての発言となる。国内の人気はがた落ちでも、日本を代表する政治家のようになる可能性が大きく、問題は国家的な損失につながる。たしかに発言を聞いているとまるで、自らが日本の政治を壟断しているかのような“僭越さ”と“厚かましさ”を感じたからである。
外務省は、橋下発言の世界各国での反響を集めて、至急分析する必要があろう。とりわけ韓国の米議会への卑劣なロビー活動などに利用されないか、気をつける必要がある。官邸はこれを受けて対策を練らなければならない。橋下は自らの政治責任を問われて「今回の発言に対して国民がノーと言えば、次の参院選で維新の会は、大きな敗北となる。その選挙結果を受けて党内で私が代表のままでいられるか、代表のままでいいのか論議が生じると思う」と発言した。まるで評論家のような発言だが、普通の政治家ならこれだけの舌禍事件を引き起こしたら、自ら辞任する。自分の存在自体が、党全体のマイナスに直結するからだ。しかし、維新は共同代表・石原慎太郎が度し難い極右だし、旧太陽系の老政治家達も国粋主義的な色彩が濃い。若手は民主党などを逃げ出した日和見議員が多い。皆橋下に反旗を翻す意気込みもない。橋下がいれば大マイナスだが、どっちにしても参院選は大敗北だ。産経の世論調査では、橋下の慰安婦発言を女性の79・3%が「不適切だ」と回答している。とくに風俗業活用発言は女性の82・4%が嫌悪感を示している。
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