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2013-07-25 15:40
「内向き」の同盟国米国とどう向きあうか
田久保 忠衛
(公財)日本国際フォーラム理事
私は日米同盟の意味を日本の安全保障のために不可欠であることを信じてきたし、予見し得る将来にわたってこの考えは揺らがないと断言する。が、戦後の日本は冷戦終焉前はソ連、そのあとは中国、朝鮮半島の分析に重点を置いてきたのは当然としても、米国の研究は誰もがわかっているとして本格的な観察を怠ってきたのではないかと思っている。
米国が基本的に衰退しているかどうかについては、米国内にも日本にも「衰退論」が目につくが、中国、ブラジル、南アフリカなどのBRICS諸国が国力をつけてきたための、相対的衰退論があって、絶対的衰退論ではない、との主張を私は述べてきたし、それをいま修正するつもりはない。が、オバマ政権はとくに第二期に入ってから要注意の赤信号が出ている。国内で内国歳入庁(IRS)による反オバマの団体や組織に対する不当な介入があり、昨年九月のベンガジにおける米大使以下四人の死亡事件に関する不正確な情報公表をし、さらにAP通信記者の通話記録収集、さらに米国家安全保障局(NSA)による米国内外の個人の通信情報収集・監督活動を暴露した元中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン問題での大騒ぎはいまだに収まらない。
「孤立主義」と決めつけてはいけないが、米外交は確かに「内向き」に転じている。イラクから撤兵し、来年はアフガニスタンから大部分の米軍撤兵を約束した米国は、中国に対応するため、軸足(ピボット)をアジアに移す政策、最近は再調整(リバランス)といわれる政策に転換するようになった。それも、オーストラリアのダーウィンに米海兵隊を輪番制で配備するとか、フィリピンとの安全保障上の結び付きを強める、といった部分的なアジア重視としか考えられない。
オバマ政権第二期ではっきりしてきたのは、海外での軍事的トラブルに巻き込まれないように神経質になっているということだ。尖閣諸島で日本に日米安保条約第5条の発動を約束してはいるが、中国を挑発しないようにと日本に直接、間接の働き掛けがある。中国とは軍事的に対立し、幾多の経済摩擦をかかえながら感情を傷つけないよう神経を使っている。北朝鮮の核開発計画は阻止できないままだ。イランの核開発にも思い切った手は打てず、シリアの反体制派への支援もようやく決めたものの、小火器と弾薬だけだ。エジプトの事実上のクーデターにも曖昧な態度をとり続けた。「強い国」をうたっている「外向き」の安倍政権は「内向き」の同盟国である米国とどう対応したらいいのか。安倍路線は日本が働き掛ける「日米同盟」の強化だと考える。
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