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2013-09-30 11:13
「女性が輝く日」はいつ来るか
鍋嶋 敬三
評論家
安倍晋三首相の国連一般演説(9月26日)は半分以上を「女性の社会進出」に費やす出色のものだった。日本外交の新たな旗として「積極的平和主義」を掲げる一方、「女性が輝く社会」を作るために国内の仕組みを変えようとする取り組みが「日本外交を導く糸ともなる」と宣言した。安倍内閣は経済再生のための3本の矢の一つ「成長戦略」の一環として「女性の力の活用」を重点施策に取り上げている。「ウィメノミクス」という言葉を紹介し「女性の社会進出を促すほど経済成長が高くなる」として、女性は成長の源という主張を世界に訴えた。
首相は日本外交の課題として(1)女性の能力開発、(2)女性を対象に保健衛生分野の取り組み、(3)平和と安全保障分野への女性の参画と保護を3本柱に、3年間で30億ドル超の政府開発援助(ODA)提供を約束した。国連演説後の記者会見でも、「女性の活躍こそが現代の閉塞感を打ち破ることができる」とも述べて、女性の活力に大きな期待を寄せたが、ニューヨークでの米国人女性との懇談会でも首相の姿勢は高い評価を得たようだ。同じころ、ワシントンで講演した厚生労働省の村木厚子次官は女性が活躍できる条件として、保育所の確保と企業の女性社員の昇進制度の確立を挙げた。
しかし、安倍内閣が政策の柱として掲げる「待機児童の解消」「職場復帰・再就職の支援」「女性役員・管理職の増加」はかけ声倒れに終わらないか? 首相官邸の資料によれば、保育の受け皿は2012年度までの5年間に13万人増え、2014年度までに20万人、さらに2017年度までに20万人増で待機児童の解消を目指す集中整備計画を立てているが、保育士の育成、保育所の整備など実現可能な計画なのかどうか。上場企業(3608社)の女性役員はわずか505人(1.2%)に過ぎない。地方自治体を含めた官公庁、企業における男性の育児休暇取得の制度化や税制を含めた法整備、そして何よりも男性社会の意識を変えない限り、「女性が輝く日」は遠い。
世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表している「世界の男女格差報告」(2012年版)で日本は調査対象の135カ国の中で前年より順位を3つ落として101位と主要国(G8)中最低であった。アジアではフィリピンの8位がトップである。この報告は経済活動への参加と機会(給与、参加レベル、専門職での雇用)、教育、政治への関与(意思決定機関への参画)、健康と生存の4つの分野での男女格差を指数化したものだ。WEFのサーディア・ザヘディ氏は「世界競争力指数トップ10カ国のうち6カ国は男女格差指数トップ20カ国以内に入る」と、女性の地位と経済成長の関連性を指摘している。10月下旬発表される今年版の報告を注目したい。
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