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2013-11-22 06:39
特定秘密法案修正はまるで「朝三暮四」
杉浦 正章
政治評論家
「朝三暮四」という言葉が荘子にある。中国、宋の狙公(そこう)が、飼っている猿にトチの実を与えるのに「朝に三つ、暮れに四つやる」と言うと、猿が「少ない」と怒った。このため、「朝に四つ、暮れに三つやる」と言うと、猿がたいそう喜んだ、という説話だ。これとそっくりなのが特定秘密保護法案をめぐる与野党の修正協議の合意だ。まず秘密の指定期間について維新の会は当初、「30年以上は認められない」とのスタンスだったが、与党が「最長60年」案を示すと、交渉担当の藤井孝男が「だいぶ詰まってきている」と応じた。「朝の餌」の「30年の主張」を「60年」に引き延ばされて「詰まってきた」とは、誰が見ても滑稽話の類いだ。「絶対反対」を主張し、野党などをけしかけている朝日新聞が、社説で「まるで与党側の焼け太り」とかんかんになって怒るのも無理はない。もう一つある。みんなとの協議で合意した「首相=第三者機関」論だ。誰が見ても第三者機関は民間人などで構成するものであろうが、合意では首相が「第三者機関的観点からの客観性を担保する」のだそうだ。これでは民主党幹部が「泥棒に札勘定させるのと同じ」と憤慨するわけだ。まさに維新とみんなは賛成の理由を作るための交渉を続けていたことになる。
さらに滑稽話はまだ続く。維新が主張した「特定秘密にかかわる省庁を限定する」という主張に、与党側は「5年間秘密を指定しなければ、省庁の指定権限をなくす」という修正案を提示、維新はのんだ。しかし、これは逆効果だ。「指定権限をなくされてはたまらない」と、ほぼ確定的に該当省庁は特定秘密を「作る」からだ。行政機関に不必要な秘密指定を促すおそれすらある。最大の焦点であった検証機関の設置問題では、民主党など野党側は、特定秘密の事前チェックを主張している。しかし与党側の回答は「秘密法案の付則で、独立した公正な立場で検証、観察できる新たな機関を検討する」であった。付則には設置の時期やその機能についての言及はない。政界では「前向きに検討する」は何もやらないことと等しいと言われているが、その「前向き」すらもないのでは、単なる努力規定に過ぎない。こうした付則などはほとんどが野党のメンツを立てるためのもので、まず実現はしない。検証機関という第三者機関の設置拒否は、まさに法案が換骨奪胎されるかどうかのコアの部分である。これに応ずれば、秘密が秘密でなくなる恐れがあり、内閣の存在すら無意味になってしまう。与党が応じないのは当然である。また秘密を漏洩した公務員への罰則を10年にする点も譲歩していない。極左が主張する問題の核心部分は全く変わっていないといってよい。
要するに、修正協議は全く与党ペースで進んでいるのだ。朝日がみんなと維新を批判して「補完勢力どころか翼賛野党」と決めつけているのも、自らの主張が敗色濃いことの裏返しであろう。なぜこのような圧倒的な与党ペースが展開されるかと言えば、安倍政権の志向する「積極的平和主義」への支持が、国民の意識の根底にあるからだ。日米安保関係を強化し、周辺諸国の軍事攻勢をけん制する、というやむにやまれぬ事情を国民が理解し、その結果が総選挙と参院選挙の自民党圧勝となって現れたのだ。自民党が公明党と共に巨大与党勢力となり、野党が「脳しんとう」を起こして、その後遺症が続いているからでもある。民主党は左傾化して、何でも反対党化している。真っ向から法案に反対しているのは、共産、社民の極左2党と朝日であり、日本の政治はこれら左翼勢力の反対を押し切って、戦後の繁栄を成し遂げてきたのである。今回も国の繁栄の瀬戸際を決める判断が要求されているのだ。
全く忘れられているのは、中国が尖閣問題で領海侵犯を繰り返し、北朝鮮が核ミサイルでどう喝し続ける極東情勢の激変である。特定秘密保護法案は、中国や北朝鮮が行っている機密漏洩は「即死刑」という国内抑圧型の秘密保護には到底及ばないレベルの制度を導入するだけの話である。米欧民主主義諸国が通常のこととして行っている国家安全保障会議(NSC)を補完する秘密の保護なのである。冒頭からるる述べてきた中間政党の苦肉の策の修正妥協も、こうした極東情勢を必然的に反映しているのだ。みんなも維新も政治の方向としては妥協しかないと思っているのだが、一部世論の攻勢に言い訳を作る必要があるのだ。これが「朝三暮四」的な妥協を余儀なくされている理由だ。来週11月26日にも与党側は衆院を通過させる構えである。民主党の主張は、根底に法案の廃案か継続審議への思惑に満ちあふれている。これにとらわれていたら成立が危うい事態となりかねない。参院での審議約2週間を確保して、来月6日の臨時国会閉幕に間に合わせるべきであろう。
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