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2014-01-16 07:01
小泉“原発集中選挙”が早くも頓挫
杉浦 正章
政治評論家
不偏不党を標榜しているのが全国紙各社だが、細川護煕立候補の都知事選をめぐっては、なりふり構わぬアンフェアぶりを示し始めた。そのトップを走るのが朝日新聞であり、社説で原発ゼロの争点化をもろ手を挙げて歓迎した。これに毎日と東京が追随する。朝日は紙面構成の照準を明らかに「細川寄り」に定めており、1月16日付の朝刊でも巧妙な世論誘導ぶりを展開している。一方読売は新たに細川が五輪返上論であることを暴露して、細川陣営に痛烈な打撃を与えた。産経も反細川だ。細川をめぐるマスコミのバトルが選挙選の帰趨を左右しかねない状況だが、主要紙は原発一点集中選挙にだけは、一致して反対している。まあ朝日が臆面もなく反安倍政権を露出するのは、特定秘密法案をめぐっての一連の“風評”報道など毎度のことで、今度も驚かない。しかし、16日の紙面はいかにも異様だ。いくら人気があるとは言え、復興政務官・小泉進次郞の発言を一面4段でデカデカと報じたのだ。内容は、自民党の支持する舛添要一に対して「私は応援しない。応援する大義はない」と述べた点だ。後ろ足で砂をかけて離党した舛添を支援する自民党もだらしがない極みだが、まだ雑巾がけの身であり、当選2回の陣がさ議員の発言を、鬼の首を取ったように報道して、恣意的紙面を作成しているのだ。朝日の狙いは細川を知事に祭り上げて、「原発ゼロ」を唱えさせ、安倍政権を揺さぶろうというところにあるのは言うまでもないが、いくら何でも「自民党をかき回す小泉親子」の表現はないだろう。小泉純一郎は自民党への裏切り行為に出たが、進次郞は朝日の期待とは別に“スジ論”を言っているにすぎないからだ。
一方これに対して、読売も黙ってはいない。2面トップで「細川叩き」を展開している。細川陣営が公約作りに当たって、佐川急便からの1億円借入問題と「五輪返上発言」で一貫性に苦慮していると言う内容だ。借入問題は間違いなく問題化して焦点になるが、五輪返上論は国民的祝賀ムードに水を差すだけでなく、「細川に五輪対応を委ねて大丈夫か」という選挙戦の重要ポイントを惹起(じゃっき)する。その内容は、細川が親しいジャーナリストの池上彰の著書のインタビューで「安部さんが『オリンピックは原発問題があるから辞退する』と言ったら、日本に対する世界の評価が格段に違ったものになっていた」と語ったというものだ。これは脱原発よりもインパクトが大きい。なぜなら脱原発は各候補が一様に唱え始めているのに対し、五輪反対は細川一人だけであるからだ。舛添はじめ他の候補が佐川疑惑とともに追及することは確実であり、小泉純一郎も真っ青の焦点浮上だ。総じて、朝日が「世論誘導の陰謀」の臭気をふんぷんとさせているのに対して、読売は事実関係を淡淡と報じており、その意味では選挙報道の王道を行っている。
社説でも、主要紙の論調はくっきりと分かれている。まず「脱原発の争点化」については、読売と産経が「都知事選とそぐわない」と主張しているのに対して、「焦点になるのは当然」とするのが朝日、毎日、東京の3紙だ。読売は「そもそも原子力発電は、国のエネルギー政策の根幹にかかわる問題だ。脱原発を都知事選の争点にしようとするのは疑問である」と主張。産経も「都知事選をてこに脱原発の世論を一気に拡大する狙いだろうが、原発というエネルギー政策の根幹を決めるのは国の役割である。どうしても原発ゼロを実現したいなら、今一度国政に打って出て問うべきだ」と述べている。両社とも「原発ポピュリズム選挙」の否定であり、まっとうな姿勢だ。これに対して朝日は「都民が当事者として考えるにふさわしいテーマ」、毎日「国政の大きなテーマである原発問題も主要な争点」、東京「国の原子力政策は間違いなく主要な争点」と焦点化を当然のことと主張している。脱原発を何が何でも知事選に持ち込みたい姿勢だ。この分裂傾向は原発推進か脱原発かという各社の従来からの主張をくっきりと反映したものであって、事新しいものではない。しかし賛成派、反対派に共通した一致点が一つだけある。それは小泉の狙う原発シングルイシュウでの一点突破選挙への反対である。読売、産経はもとより反対だが、朝日と毎日が小泉戦術に真っ向から反対論を展開しているのだ。朝日は「選挙を原発にイエスかノーかの一色に染め上げ、スローガンの争いにすることには賛成できない」ときっぱり反対。毎日も「細川氏に望むのはワンフレーズ的に脱原発を主張せず、電力供給や使用済み核燃料の最終処分問題など、エネルギー政策の具体像を論じることだ」と反対だ。
こうした新聞論調の傾向を分析すれば、小泉が郵政改革選挙の再来を狙っても、マスコミは同調しないということだ。まさに敵味方峻別方式の一点集中選挙は頓挫した。年を取って頭が固くなると、昔取ったきねづかへの郷愁が湧き、まだ自分ならやれるととんでもない誤算に陥るものだが、マスコミは小泉劇場に2度も3度も踊らされるほど甘くはないということだ。それにつけても、主要紙はこれだけくっきりと支持・不支持を鮮明にするのなら、不偏不党の綱領などやめて、米国のように支持政党をはっきりさせるべきではないか。支持政党をはっきりさせないまま朝日のように世論誘導を計るのは、森喜朗が小泉を評したのと同様に「卑怯」であろう。
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