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2014-03-24 10:18
オバマ日韓修復外交の狙い
鍋嶋 敬三
評論家
歴史問題で緊張が続く日韓関係を打開するため、オバマ米大統領の主導で安倍晋三首相、朴槿恵韓国大統領の3カ国首脳会談が25日、オランダのハーグでの核安全保障サミットを機に開かれる。米国の狙いは、共に同盟国である日韓両国の関係修復だけではない。中国が一方的に現状変更を進める北東アジアの安全保障情勢に対し、同盟国に米国の関与を再確認するためだ。さらに、冷戦後の国際秩序を維持するための同盟・有志連合の再構築も目指す。北朝鮮の非核化を求める6カ国協議における米日韓協力体制の立て直しとともに、ロシアによるクリミア併合という現実を前に、軍事力を背景にした恣意的な秩序の変更を阻止するための世界に向けた結束強化の意思表示でもある。
ライス米大統領補佐官(国家安全保障担当)は3月21日の記者会見で、大統領の欧州・中東歴訪について共通のテーマは「米国の同盟とパートナーシップの基本的な強さと重要性だ」と強調した。米日韓3カ国首脳会談についてライス氏は「北東アジアの安全保障に米国が関与する強力なメッセージ」と述べた。北朝鮮に対してだけなく、韓国が日本に背を向けつつ、すり寄ろうとしている中国に向けた意味合いもある。米国は日韓対立にほとほと手を焼いてきた。米国の専門家の見方は厳しい。アメリカン・エンタプライズ研究所(AEI)のマイケル・オースリン日本研究部長は議会の公聴会で「率直に言って、米国の忍耐はいつまでも続かない」と言い放った。感情的にエスカレートする対立に「愛想が尽きた」と言わんばかりである。同氏は日韓関係の行方に悲観的な見方を示している。
外交問題評議会シニア・フェローのシーラ・スミス氏は日韓基本条約に基づく戦後日韓外交の基礎が問われているだけでなく、日韓関係の悪化が中国の経済的、軍事的影響力増大という北東アジアでの顕著な変化の中で起きていることに着目し、戦後処理の問題が問われており、最も懸念すべきは日中関係だと指摘した。米国にとっては日韓関係は北朝鮮がもたらす軍事的脅威への対応だけではなく、米国との間で「新しい形の大国関係」を目指す中国との関係においても重要な意味を持つ。その意味で日韓関係の悪化は米国にとって「最大の問題」(スミス氏)というわけである。
米国の核心的国益について「4年毎の国防計画見直し」(QDR2014)は米本土防衛とともに、「米国のリーダーシップに基づく国際秩序」を掲げ、国防戦略の柱として世界的な安全保障の構築を挙げた。米国の関与は紛争の抑止に不可欠であり、同盟国やパートナーへの保証としてもなくてはならない。このような世界的な関与が米国のリーダーシップと影響力にとって基本的に重要だと強調している。しかし、ウクライナに対するロシアの主権侵害、クリミアの併合など誰の目にも明らかなプーチン大統領の国際法違反の行為に対して米国は抑止できず、後追いの対応に終始している。「米国主導の国際秩序」の実際はサメに破られた漁網のように大きなほころびが生じている。オバマ大統領の日韓修復外交が米国のリーダーシップ回復に成果をもたらすか、オバマ戦略外交の試金石である。
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