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2014-03-31 05:17
国の有り様は中国に占領されれば変わる
杉浦 正章
政治評論家
集団的自衛権をめぐって朝日新聞や共産党は「行使を容認すると日本という国の有り様(よう)が代わる」と主張する。「地球の裏側まで言って戦争をする国になる」という解釈だ。しかし、これは明らかに憲法解釈変更反対のプロパガンダであり、秘密保護法反対の時と同じパターンで、“風評”を作って安倍政権をおとしめ、解釈改憲を阻止しようという、卑劣極まりない手法である。最近では政権枠内の公明党までが「国の有り様が代わる。個別的自衛権で対処できる」(幹事長・井上義久)と言いだした。これらの主張はあまりにも稚拙で、根拠に乏しく、論駁(ろんばく)は容易だ。極単な主張には極端な主張で言い返せば良い。逆に「国の有り様は集団的自衛権の行使を容認しないと変わる」と言えばよいのだ。個別的自衛権に固執して集団的自衛権の行使を拒否して、アメリカに見捨てられ、中国に尖閣諸島どころか本土まで占領されれば、確かに国の有り様はがらりと変わるのだ。北朝鮮の核ミサイル攻撃を東京、名古屋、大阪、福岡が受けても、大きく変わる。どっちの有り様がいいか、選挙の争点にして国民の信を問えば良い。要するに、集団的自衛権をめぐる議論は、「憲法9条の現行解釈を守っていれば、戦争にはならない」という左翼の平和ぼけの議論と、「現実の極東情勢からみて、中国や、北朝鮮からの急迫不正の侵略はありうる」と見る世界の常識との戦いである。
先が見えた岸信介による安保条約改定と、先が見えない社共や朝日など反対勢力との戦いとそっくりである。改訂したから半世紀以上の平和が保たれたのだ。極東の安保環境はその冷戦時代より悪化している。日米韓首脳会談があれば日本の防空識別圏にミサイルを撃ち込む北朝鮮。去年は日本の都市名を挙げて核ミサイルを撃つと宣言している。過去20年間に軍事予算を20倍以上に増やして、南シナ海や東シナ海で虎視眈々と領土拡張を狙う、紛れもなき軍国主義国家・中国。その存在を毎日目の当たりにしながら、脅威も感ぜず、事態を理解できず、いつまでたっても「平和憲法があるから、戦争がない」と信じている無能なる人々をいかに説得するか。世界各国が保有し、国連憲章の核である集団的自衛権の行使をいかに説明するか。政治に課された最大の課題である。自民党は3月31日に首相(党総裁)直属の「安全保障法制整備推進本部」の初会合を開き、集団的自衛権の行使容認に向けて党内論議を進める。幹事長・石破茂は週1回程度の会合で10回程度開く予定であり、通常国会末頃までには反対論者を丸め込んで、党内論議をまとめて、閣議決定への道筋を開く。同時に野党などへの多数派工作を進める。野党のうち、維新やみんなに対しては政府の情報もかなり入れており、当初はとんちんかんであった幹部らの発言もかみ合うようになってきた。
こうした中で、状況を依然理解できない公明党幹部らを説得するために、“歯止め策”の検討が本格化している。首相直属の安保法制懇でも、「地球の裏側論」というプロパガンダに根拠を与えないための「表現」を検討している。ここで登場してきているのが、自民党が法案化している「国家安全保障基本法案」の表現である。同法案では「日本と密接な関係にある国が攻撃を受け、それが日本への攻撃とみなされるほど重要な場合に限る」と表現しているが、この限定的方向を採用するのだ。法制墾内部では現行9条解釈の「自衛権の行使は我が国を防衛するための必要最小限の範囲にとどめ、攻撃排除は個別的自衛権に限定する」を「放置すれば我が国の安全に重要な影響を与える場合に集団的自衛権の行使を認める」として、自衛権発動の原則にある「必要最小限の実力行使の範囲内に集団的自衛権の行使も含まれる」ことを明確にする方向が検討されている。もちろん「必要最小限の実力行使」の表現は生かす方向であり、したがって地球の裏側にまで米軍に従って戦争することや、米国防衛にかり出される懸念を払拭する。この限定論に基づいて閣議決定が行われるが、関連法案ではさらに具体的な歯止めがかけられる。自衛隊法や周辺事態法では個個のケースについての集団的自衛権の行使が規定されることになるだろう。
その方向としては、並行して航行している米艦船が攻撃を受けた場合の反撃や、グアムや米本土に向かう北のミサイル撃墜などが可能となる表現が挿入されるだろう。もちろん米艦船が例えば中国軍によって集中砲火を浴びているような場合の排除など、当然同盟国として反撃出来るようにする方向も打ち出す。このように“歯止め”は安保法制懇の答申と秋の臨時国会に提出される関連法案の双方でかけられる方向にある。筆者は、もともと日米安保条約の極東の範囲はフィリピン以北とされており、これにシーレーン防衛が加わる程度に限定すれば良いと主張してきたが、極楽トンボで平和ぼけの一部識者を納得させるためには、歯止めが必要なことは言うまでもない。注意すべきは中国、北朝鮮の動向である。周辺国は、日本が脆弱な民主党政権だと見れば、メドベージェフが北方領土に上陸し、李明博が竹島に上陸し、中国が尖閣での漁船衝突事件を発生させる、と言う動きに出るのだ。集団的自衛権の行使が可能になるかどうかは、中国も北朝鮮も固唾をのんで見守っている。ここで日本が解釈改憲出来なければ、「しめた」とばかりに軍事攻勢に出てくることが十分に予想される。平和ぼけの諸氏もそろそろ理解しなければならない。
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