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2007-01-18 09:29
ボルトン前国連大使の見る米中関係の二律背反性
坂本正弘
日本戦略研究フォーラム副理事長
1月16日、北岡東大教授(前国連大使主催)司会で、東大法学部でボルトン前国連大使の話があったが、極めて印象的だったのは、かつての鷹派としての強い反中姿勢が残りながら、中国の影響力の増大への二律背反的な評価である。
ボルトン氏は、中国は、国連常任安保理事国の地位を利用し、一方では、北朝鮮、イラン、ミヤンマーなどの問題でロシアと組んで米国の邪魔をし、スーダン問題では拒否権を使い、核拡散にも責任があると非難する。しかし、他方では、事務総長人事での中国の対応を評価する。即ち、地域としてはアジアだが、同盟国・韓国から、藩基文氏を選出出来て良かったとした。常任理事国である中国の影響が大きいが、中国大使と密接に連携し、成功したとする。現韓国政権の反米度を承知の上だろうが、これでは新事務総長への中国の影響力が更に、高まるということになるのではなかろうか。
日本の安保理常任理事国問題については、G4戦略は間違っていたとし、今後の常任理事国入りについては、日本の個別審査とし、米国は支持するが、中国の意向の影響が大きいという指摘であった。対中鷹派のボルトン氏は、鷹派であるが故に、急激に、影響力を増している中国を評価している面がある。
米国がイラクに囚われている間に、中国は全方位外交を展開しているが、特に、経済力を政治力に転換することを覚え、その影響力はアジアだけでなく、世界に拡大している。資源外交を展開し、多くの無頼国家を支持し、急速な中国の援助の拡大に、アジア開銀の援助を断る国も出てきている。また、多国間交渉も発展している。上海条約機構はロシアがいやがるほど中国の主導性が強い。アセアン+3を利用し、アジアの主導性を高め、6者会談を主催し、国際的地位を高めている。軍事力の増強も、単に台湾目標だけでなく、空母保有への宣言など、シーレーンの確保にも乗り出す姿勢である。
もちろん、中国の発展は直線ではない。アフリカなどでは反発も出ている。しかし、その影響力は質を改善して、世界での存在感を高めている。このような中国の姿勢を、自国の覇権の追求だ、ルール違反だと批判するのは重要だが、国際政治では力のないものは相手にされない。国連平和維持活動でも中国の派遣人員は1045人と日本の45人を遙かに抜いている。中国がイラクの安定に力を貸すとして、軍を派遣したら米中関係はどうなるか、可能性は0に近いが、日米関係の悪夢である。
日本経済の回復は喜ばしい。しかし、日米政府間で合意した基地問題でこれを履行できず、辺野古での計画も更に変更するようだと、米国の信頼を失い、日米同盟も危機である。
小泉政権の最大の功績は国内の構造改革による経済回復であった(もちろん日米同盟強化はあった)。安倍政権の外交・安保での成果はそれなりであった。しかし、中国の影響力の拡大は予想を超えている。アジアの急激な変化について行くには、総理が、外交安保での改革を加速し、憲法改正と集団自衛権の実現に邁進することが、急務であると改めて主張したい。
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