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2014-10-31 06:56
自民党「傲慢二奉行」の増税論は欠陥だらけ
杉浦 正章
政治評論家
10月30日の予算委員会の発言から見ると、どうも首相・安倍晋三の出す雰囲気が消費再増税延期の方向に棚引いているような気がする。財政再建目標が国際公約であることを否定、増税して景気が腰折れする懸念を表明するなど、トーンに変化が見られる。一方で自民党幹部らは、何かの一つ覚えのように再増税実施を強硬に唱えだした。その主張も傲岸不遜だ。とりわけ総務会長・二階俊博と税調会長・野田轂がひどい。「胡麻の油と百姓は絞れば絞るほど出るものなり」と述べた江戸時代の勘定奉行・神尾春央並みだ。まるで庶民の窮状などはとんと念頭になく、「傲慢二奉行」の様相。一体この人たちは「財務省イエスマン」で、肝心の選挙に勝てると思っているのだろうかと思いたくなる。二奉行の発言を見ると、情け容赦などあればこそだ。野田は「リーマンショックに匹敵する経済変動があるわけではない。予定通り引き上げるのが“当然の姿”」なのだという。一方二階は「国際的な信用にもかかわる。約束通り実行することが最重要政治課題」と言ってはばからない。
まるで古証文をたてに借金を取り立てる高利貸しの因業おやじのような口ぶりで、そこには4月の増税で実質賃金が目減りしてあえぐ庶民へのまなざしは感じられない。自民党も、野党がだらしがないとここまで高姿勢になるかという見本だ。総じて理論武装もなっていない。国際金融危機の引き金となったリーマンショックは、100年か200年に一度おきるかどうかの事態であり、そんなものを引き合いに出して、税調会長がよく務まると首を傾げる。一方二階は、国際的信用論をたてにする。「1000兆円に達した国債の暴落、債務不履行のデフォルトが発生する」と言いたいのだろうが、これもあり得ない。首相側近の官房参与・本田悦朗は「デフォルト論は嘘だ。日本の国債は海外の投資家から絶大の信用を受けている。確率を計算すればデフォルトは250年に一度くらいのリスクしかない。ロンドンとニューヨークの国際投資機関70社を回ったが、1社として危惧(きぐ)しているところはなかった。デフォルトを心配している専門家も皆無だ」と反論している。
財務省の“吹き込み”だけで理論武装してはいけない。また党執行部は、5兆円規模の補正予算の景気対策を増税と同時に打ち出す方針のようだが、本田は「2%の税収増で5兆円。5兆円増税して5兆円ばらまくなら、延期するのと変わらない」と主張するが、もっともだ。この本田の理論武装は卓越しており、「財務省イエスマン」らのそれは到底及ばない。安倍の本田への信頼も厚く、8月の夏休みには山梨県内の別荘で5時間も話し込んでいる。その安倍が予算委で微妙なトーンの変化を見せている。まず2015年にプライマリーバランスを半減させる国際公約が増税延期で果たせなくなる問題について「もともと国際公約とは違う。経済は生き物だから、何が何でも絶対にという約束はない。日本としては最大限の努力をするというコミットメントでしかない」と固執しない方針を打ち出した。消費税の可否を判断するに当たってとらわれない柔軟さを強調したのだ。
さらに安倍は「消費税を増やして景気の腰折れを招いては、当然税収が落ち、デフレに逆戻りしてしまう危険性がある」とも強調した。再増税がデフレ脱却を目指すアベノミックスを直撃してしまっては、元も子もなくなるという意味だ。安倍周辺では、再増税しないことによるデフレ脱却を最優先する戦略を立てている。1年半延期して2017年4月実施への延期論の背景は、16年9月ごろにはデフレ脱却を宣言できるという読みがあるのだ。再増税の可否の判断は7-9月の国内総生産(GDP)を見て行うが、その速報値は11月17日に出る。安倍は12月8日の改定値を見てから判断したいとしているが、数値が大幅に悪化した場合は、改定値で好転する可能性は少なく、事実上速報値で判断せざるを得なくなる可能性がある。この再増税方針は、12年に谷垣と首相・野田佳彦らがとりまとめた方針だが、一内閣で二度も増税が出来るのかどうかという政局判断が皆無の暗愚決定であった。つまり、1年半後に再度増税をするという制度設計自体が間違っているのだ。財務省の役人ペースに乗せられたのだ。辛うじて消費税法案付則に景気条項があることが救いである。安倍はこの景気条項を発動して少なくとも1年半延期に踏み切り、政局運営の自由度を確保すべきであろう。
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