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2014-12-11 06:16
秘密保護法でようやく「普通の国」になった
杉浦 正章
政治評論家
しょせん政権側は秘密を守る習性があり、マスコミはこれを暴く習性があるのだ。特定秘密保護法が施行されたが、同法があろうがなかろうが関係はない。未来永劫にこのいたちごっこの戦いは続くのだ。マスコミは「取材源が萎縮する」と言うが、法案を口実に萎縮しているのは記者の方ではないか。甘えてはいけない。萎縮しようがしまいが、国民のためにならない情報は公に報道する。これが報道の基本であり、平たく言えば記者根性というものだ。そもそも特定秘密保護法は欧米でもアジアでも各国が共通して施行している法体系であり、日本がようやく「普通の国」になっただけのことだ。漏洩への最高刑は米国も中国も死刑だが、日本は懲役10年とゆるやかだ。その死刑があり得る機密漏洩をめぐるマスコミと政権のすさまじい戦いを米国で特派員時代につぶさに見た。1971年のペンタゴン・ペーパーズ事件だ。ニューヨークタイムズがベトナム戦争に関する国防総省の機密文書を連載し始めたのだ。
秘密文書作成にかかわったダニエル・エルズバーグから入手したものだ。事態を重視した大統領ニクソンはペンタゴン・ペーパーズの新聞への掲載を国家安全保障に脅威を与える国家機密文書の漏洩であるとして、記事差し止め命令を求め、連邦地方裁判所に提訴した。マスコミと政権の血みどろの戦いが展開されたが、最終的には連邦最高裁判所での上告審で「政府は証明責任を果たしていない」という理由で却下された。まさに言論の自由が勝利した瞬間であり、以後の判例や、政府の方針決定に大きな影響を与え、米国は結局ベトナム戦に敗北して撤退した。このように、言論の自由とは、基本的にはマスコミが政権との対峙の中で戦い取るものであり、天から与えられるものではない。秘密保護法があろうがなかろうが、この構図には変わりはない。それに今回の秘密保護法を見れば、とてもこれにより日本が全体主義に陥り、言論活動が抑圧される性格のものとは思えない。だいいち首相・安倍晋三が「和製ヒットラー」になるとも思えない。安倍自身テレビで「秘密保護法はテロリストやスパイ工作を対象にしたもので、国民とは全く基本的に関係はない。報道が抑圧される例が生ずれば、私は辞めますよ」と言明している。
もともと日本は世界の主要国から「スパイ天国」と見られており、昔内調室長が「アメリカですら、信用して情報をくれない。モサド(イスラエル諜報特務庁)からもらう情報が多い」と嘆いていたのを思い出す。それはそうだろう、法律の不整備と公務員の弛緩が原因で数多くの機密軍事情報が日本からソ連や中国に流出したと言われる。その氷山の一角が7年前に発覚した自衛官によるイージス艦の性能に関する機密漏洩事件だ。国防のトップ機密をよく中国に漏らしたと思われる事件だったが、今中国海軍はイージス艦そっくりの高度なシステム艦を保有して、これ見よがしに演習に繰り出している。これら軍事情報の流出は、まかり間違えば国民の生命、財産を危険にさらすことになりかねない。何十万人もの死者を出す事態が機密漏洩で発生しないとは限らない。例えば迎撃ミサイルに関する情報が中国や北朝鮮などに筒抜けになれば、安全保障戦略が決定的に不利な状況に置かれかねないのだ。
安倍の「辞めます」発言に関して、朝日は「要するに政権を信用して欲しいということだろうが、それをうのみにするわけにはいかない」と拒絶反応だ。折から偶然にも選挙期間中に法律が施行される事態となった。ここは安倍が堂々と秘密保護法の必要を説けばよい。おそらく有権者は自民党を圧勝させることにより、「政権を信用」するだろう。野党や毎日など一部マスコミは選挙中の施行に反発している。民主党幹事長・枝野幸男が「衆院解散により不十分な国会の監視システムすら設けないままの状態で施行するのは問題」と噛みつけば、社民党幹事長の又市征次も「衆院議員が誰もいない中での施行は言語道断」と批判。これこそノーテンキな無知丸出しの事実誤認だ。昨年12月6日成立、同年12月13日に公布された法律には「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」となっている。それを受けて政府は10月14日の閣議で12月10日施行と決定しただけである。解散風は11月9日から吹き始めたのであり、10月の時点では誰も安倍が解散・総選挙に踏み切るとは思っていなかった。したがって閣議がこの段階で解散にぶつけようと思って日程を組むことはありえない。おまけに選挙に不利に働きかねない法律の施行を選挙期間中にあわせるなどと言うことはあり得ない。そもそも法律は成立したのであり、野党が1年たってから噛みついても遅いのだ。黒白は選挙が付ければよい。安倍が原発再稼働、集団的自衛権の行使とともに秘密保護法も「選挙圧勝」で信任を受けることは確実だ。
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