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2014-12-16 06:50
厳冬の日中、日韓に薄日が差し始めた
杉浦 正章
政治評論家
中国も韓国も優秀な特派員は全てワシントンに配置して、東京には二線級ばかりを置いているのだろうか。特派員らが本国に送った総選挙結果の反響を分析すると、首相・安倍晋三が「今にも改憲に動く」の大合唱である。中国の環球時報が「一層憲法改正への加速を意味する」と論ずれば、朝鮮日報は「憲法改正の足場を確保した」と断定。おまけに安倍が戦後70年の来年「村山談話を傷つける談話を出す」と付け加えた。まるで誤報と憶測の山を築いている。これで中韓両国民や政府に誤判断されてはかなわない。両国はもっと優秀な特派員を東京に出すべきだ。いうまでもなく、改憲は安倍自身が「高いハードルがある」と述べている通り、まだ参院で3分の2に達しておらず、衆院でもブレーキ役の公明党と合わせて3分の2なのだ。自民党の悲願の党是であるから、総裁たるものが前向き姿勢を示すのは当然であるが、優先順位はトップではさらさらない。さらにたとえ国会の発議が実現しても、最終的には国民が投票で決める制度であり、関門は大きいのだ。
民主主義国家における選挙制度もよく理解していない。選挙結果は国民の意思の反映であり、安倍がひとりでに長期政権の基盤を築いたわけではない。その国民の意思について特派員らは中韓両国の対日姿勢が大きく作用していることに全く気付かない。したがって、それを解析出来た記事もない。「安倍自民」への票は、中国が他国の領海へ公船をさしむけたり、韓国がありもしないことが判明した慰安婦強制連行など歴史認識に固執していることに、反発した結果である。中韓両国がこうした姿勢を繰り返している限り、「安倍自民」は有権者に支持され安泰であることが分かっていないのだ。それでも両国首脳の立場は微妙な変化を見せており、さすがに特派員レベルとは異なる。まず中国国家主席・習近平が周恩来の「二分論」を紛れもなく踏襲し始めた。周恩来の「二分論」とは日本軍国主義者と一般国民を分けて対応するというものである。周恩来は「日本人民も吾が人民と同じく日本軍国主義者の犠牲者であり、賠償を請求すれば、同じ被害者の日本人を苦しめることになる」と述べて、軍国主義と日本国民を区別している。
習近平は「少数の軍国主義者が侵略戦争を起こしたことによって、その民族を敵視すべきではない」と言明したのだ。12月13日に開いた旧日本軍の南京占領時の犠牲者を追悼する式典での演説だが、一方で習は「歴史を顧みない態度と侵略戦争を美化する一切の言論に断固反対しなければならない」と強調。「南京大虐殺の事実を否定しようとしても、30万の犠牲者と13億の中国人民、平和と正義を愛する世界の人々が許さない」と、口を極めて事件を非難している。この立場は習近平指導部が来年を「抗日戦争勝利70年」と位置づけ、歴史認識問題で安倍政権に妥協しない姿勢であることを鮮明にしている。共産党内部の権力抗争対策や国内世論の統一のためには「歴史認識での反日」と「領土問題」を前面に打ち出すのが最良の道と判断している証拠だが、日本国民と区別することにより経済文化交流を深めたいという思惑がある。1972年の田中角栄・周恩来会談はまさにこの「二分論」で日中復交が実現、以後莫大(ばくだい)な日本の対中経済援助と技術支援が行われ、中国躍進の原動力となった。その流れの踏襲に他ならない。
一方で朴槿恵は去る1日、経団連会長の榊原定征と会談した際、歴史問題の解決について「韓国側の環境整備」を進める意向を示した。「日本側には慰安婦問題で誠意ある態度を示して欲しい」と言う発言は相変わらずであったが、「日本側から誠意ある姿勢を期待するが、韓国側としてもその環境整備に努力したい」と一定の配慮とも言える発言をしたのだ。「環境整備」とは、あきらかにこれまでの棒を飲んだような姿勢からの変化が感じられる。北京における11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の夕食会で安倍と朴は隣り合わせになって長時間“会談”しており、その内容は明らかにされていない。何らかの進展があった可能性がある。こうして日中、日韓関係は厳冬期ではあるが若干の薄日が差し始めた感もある。3国は来年早々にも外相会談を行う流れも生じており、これを手始めに本格的な首脳会談への道筋を探ることになりそうだ。安倍は総選挙での国民の圧倒的な支持を背景に、安易な妥協を避け、自信を持って対応すればよいことになる。
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