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2015-03-11 16:49
公明党の巧妙な対自民戦術
中村 仁
元全国紙記者
自民一強体制に張り付いている公明党の動きをみていると、巧みな計算がなされているようにみえてきます。自民の強硬な出方をけん制しながら、公明党が求める要求をだしては気をもませ、最後は決裂でなく、自公政権として成案がなんとかまとまるという筋書きです。そのような展開が最近、安全保障法制の見直しの場面でしきりです。日本の平和維持のあり方がかかった安保法制ですから、平和主義を標榜する宗教政党の公明党は張り切るのでしょう。安倍政権の積極的平和主義には強引な面が少なくなく、それに公明党が立ちはだかる、そんな展開です。決裂するのかなとみていると、最後は公明党が降りてくるのです。おなじパタンがくりかえされるので、深刻な対立もあるにはあるにせよ、多くは合意のもとでの対立ではないかと思うようになりました。この対立で両党が得をします。多用しすぎると、「演出がすぎる」との批判が高まり、対立劇の効用が低下します。
自民党は安倍色を前面にだした一強政党として、警戒されています。暴走、独走するのではないかとの懸念がついてまわります。そこで公明党がブレーキをかける役割を買ってでます。自民党はタカ派色を掲げたことで党内の強硬派を満足させ、最後は降りることで世間の警戒を解くのです。自民党は折れたようにみえても、本筋は譲っていませんので、党内は満足します。創価学会の婦人、青年層は反戦色が強く、安倍首相の積極的平和主義は歓迎していないでしょう。宗教色のほか、自衛隊員が会員に多く、生命の危険がかかる武力行使はできたら避けたいのでしょう。公明党は自民に最後まで抵抗したといって、かれらを慰留します。公明党にとって自民党とのこうした緊張感は党勢の維持にも必要なことです。最後は成案にこぎつけることで、政権から離脱しないで済みます。さらに他の野党の影響力を排除することにもなり、公明党に好都合です。
連日の安保法制論議では、公明党への配慮、譲歩がよく報道されています。「PKO(国連平和維持活動)協力法と周辺事態法を廃止し、自衛隊による海外活動を網羅した恒久法にする案を自民党は断念した。公明党の反対に配慮した」、「自衛隊の裏側まで自衛隊の活動が広がりかねないとの懸念が公明党にある」、「不審船の強制検査の際の武器使用の拡大を見送った。憲法違反の恐れがあると公明党が難色を示したため」などです。後方支援(多国籍軍に対する補給、輸送)については恒久法の構想があります。これについても、公明党幹部が「やりたいというのなら、いっぺん法律を作ってみろということだ。実際の条文をみて判断する」と強気の発言しました。どちらが第一党か分りませんね。「武力攻撃事態」、「存立危機事態」、「周辺事態」、「グレーゾーン事態」など、難しい安保用語が飛び交っています。武力行使の3要件(自衛隊の武器使用を認める際の条件)も複雑すぎます。突然、重大危機が発生したとき、こんな言葉を使って会議で議論し、結論を出してから出動していたら間に合うのでしょうかね。こんな国は他にありますかね。
複雑な安保法制論議になった理由は、緻密で細部にわたる法整備を要求する公明党・創価学会に譲歩してきたためなのでしょう。有事の際にどうでもよくなる小難しい各論ばかりが先行し、いったいこの国はどこに行こうとしているのかが見えてきません。軍事衝突の類型は多様化、複雑化しています。国対国、民族対民族、その代理戦争、本当の敵がだれなのか分らない戦争、その敵の敵がいる戦争、戦争のようでもありテロのようでもある対イスラム国のような戦争、離島の占拠、危機なのか妨害なのか曖昧な衝突と、いろいろです。自公政権が考えている分類通りの事態がおきるのでしょうかね。心配になってきました。
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