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2015-04-10 06:57
人物評から見た安倍再選確実の構図
杉浦 正章
政治評論家
人間ついてついてつきまくる時があるもので、首相・安倍晋三が今その真っ最中だ。2015年度予算が成立して、国会は安保法制で正念場を迎えるが、自民党内は党三役が全員「安倍再選」支持を表明。9月の総裁選で再選される方向がまず確実となった。6年の長期政権が確定する。最大の理由は対立候補がどこをどうひねっても出てこないのだ。議員心理からすれば3回の国政選挙で圧勝したリーダーは、自分の当選のためにも継続して欲しいのであり、その潮流は当分変わらない。野党は民主党を中心にアベノミクスや安保法制の“本丸”を突けずに、「2分遅刻した」などと言って、参院外交防衛委員長を泣かせて溜飲を下げるくらいしか出来ない体たらく。ちまちまと「重箱の片隅戦術」がやっとのお粗末政党に堕していては、政局への関与など夢のまた夢。
この一強多弱の状況がどうして生じたかと言えば、安倍が勝負に強いからに他ならない。敵が皆次ぎから次へとずっこけてゆくのである。毎回口を極めて安倍批判を展開している反安倍マスコミの牙城・テレ朝の報道ステーションは、キャスターの古館伊知郎と元通産キャリアの古賀茂明がこともあろうに本番の真っ最中に口論の醜態。反安倍同志が内輪げんかをするようではどうしようもない。農協改革では、これに強く反対してきた全中会長・萬歳章が9日お手上げの「バンザイ辞任」。アベノミクスも、髪を紫色に染めた鬼っ子のような容貌の女性経済評論家・浜矩子が当初から口汚く全面否定の“論陣”を張っていたが、株価は2万円に達する寸前。安倍は4月8日の国会答弁で「もはやデフレではない状況を作り上げた」とデフレ脱却を宣言。もともと経済評論家の見通しなどが当たったためしはないが、浜の予言はことごとく外れた。それでもテレビが使いたがるのは、予想など外そうが「反対」さえしてくれれば良いのだろう。
「好事魔多し」というし、寸善尺魔、月に叢(むら)雲、花に嵐と奢りを戒める言葉は尽きないが、確かに後半国会は地雷原を行く如しだ。安保法制と普天間移設という保革対立の核が熱せられて、誘爆を起こさせかねない状況もある。戦後70年の首相談話も、中韓両国がかたずをのんで見守っている。久しぶりに国の安全保障問題が、本格的な俎上(そじょう)に上がるが、全ては安全保障を巡る国際環境のなせる業だ。安倍の右寄りの政治姿勢が、中国の野蛮なる膨張主義に抑止力として対峙する「歴史的必然」があるのだ。中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)で外交的に圧勝したとほくそ笑んでいるが、先の米国防相・カーターの来日による日米蜜月の確認は、巻き返しの第一段と位置づけられる。安倍の訪米は、AIIBでイギリスに裏切られたオバマ政権にとっても、極東における「同盟健在」PRの絶好の機会になる。もちろん月末に決まる日米防衛協力の指針(ガイドライン)がこれを裏打ちする。
こうしたひしめく重要課題に直面する安倍は、国会答弁を見る限り体力も気力も十分であり、1次内閣の弱々しさはみじんも感じられない。しかし国会答弁と首相日程がいささか過熱気味なことは気になる。例えば防衛相の答弁が不十分だと自分で補う。普通の首相ならこれほど神経を使ったら持たないところだが、安倍は持っている。しかし途中で体力的にも精神的にもポッキリ折れないかと危惧(きぐ)される。官邸の側近は、はやる安倍を何が何でも休養させるよう心がけることが大切だ。延長国会が8月の半ばか後半に終了すると、いよいよ9月の総裁選だ。昔の代議士は、田中角栄にせよ椎名悦三郎にせよ民社党の池田貞治にせよ、人物評が見事であったが、いまはこれが出来る人物はいない。僭越ながら総裁候補とされる人たちを杉浦語録で語ればこうなる。
まず候補の最右翼・石破茂(58)だが「だるまだ」。その心は「安倍の爆走の前に手も足も出ない」のだ。というか「いまは手も足も出してはならない」のだろう。外相・岸田文雄(57)は、ただひたすら安倍に忠節を誓い、忠勤を励んでいるが、「忠勤ハチ公」で主人がいなくなっても励むのだろうか。幹事長・谷垣禎一は70歳。福田は72で首相を務め、筆者は74で現役記者を出し抜いているから、年齢と政治力は関係ないが、まあ谷垣は「安倍がづっこけた時のリリーフだけがチャンス」ということか。いったん手を挙げそうになった野田聖子(54)は「女だから褌(ふんどし)はしめないが、褌を担ぐのが精一杯」といったところだ。だいたい手を挙げても推薦人20人が集まるのか。選挙区向けに総裁選候補であるように見せかけても、田舎の爺さんはだませても、小生など都会の爺さんはだませないのだ。テレビの「時事放談」で露骨で抑制の利かなくなった反安倍発言を繰り返す野中広務とともに、「爺(じじい)放談」を繰り返す古賀誠を師と仰ぐようでは、お先真っ暗だ。小渕優子(41)チャンだけは可愛いから候補として戦う姿を見たいものだが、不祥事がたたってほとぼりが冷める3年後の総裁選でないと無理。小泉進次郎は近ごろ父親の「反原発」の毒気に当たったか全くさえないが、田中角栄風にしゃべれば「いずれにしても30年早い。雑巾がけしろ」だ。こうして候補が次々に消えて、後は売名泡沫候補が立つかどうかとなってきたのである。「放談おわり」。
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