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2015-07-05 01:14
プーチン露大統領の「領土問題、解決可能」発言をどう見るか
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアのプーチン大統領が6月20日、世界主要通信社と会見した際、北方領土を巡る平和条約問題で「すべての問題は解決可能だ」と述べた発言が波紋を呼んでいる。日本国内でも「解決への意欲を示したもの」と肯定的に受け止める人と「日本への揺さぶり発言」と否定的にみる人とに分かれている。大統領の真意はどちらにあるのだろうか。プーチン大統領はウクライナ紛争で米国、欧州諸国に一貫して強硬姿勢を取り、ウクライナ国内での親露派勢力を物資両面で支えていることは明らかだ。その結果、米欧諸国から経済制裁を受け、国際社会から孤立しているのが現状である。
こうした中で、プーチン大統領は中国にすり寄り、シベリアのエネルギーを大量に中国へ販売する方針を取っている。その一方、ギリシャや旧東欧諸国とも個別に接触し、エネルギーの販路を広げている。国益のためにはなんでもするという大統領の必死さが伝わってくる。次のターゲットとして大統領の頭に浮上しているのは、北方領土問題を解決して歴史に名を残そうとしている安倍晋三首相だろう。米国の意向には逆らえず、経済制裁に同調しているものの、すきあらばプーチン大統領と領土交渉しようと狙っている安倍首相は「ロシアの危機脱出にとって一筋の光明」と映っているに違いない。
ロシア外交関係者によると、プーチン大統領は経済制裁と平和条約のような政治問題とは別だと考えており、日本側がウクライナ紛争で制裁を続けていても、政治問題の協議には応じる意向だという。むしろ、ロシア側は日本側がこの間、一度も平和条約問題を話し合おうとしないことに疑問を抱いているという。現にメルケル独首相やケリー米国務長官は訪露した際、プーチン大統領やラブロフ外相と会談し、政治協議を行っている。ロシア外交関係者は「日本はG7などの取決めを生真面目に守りすぎるのではないか」と冗談交じりに語っているほどだ。
日本政府が熱望するプーチン大統領の年内訪日について、ロシア外交関係者は「実現するかどうかは日本次第だ。そのためには、まず岸田外相が訪露することが先決だ。外相が9月ごろまでに訪露すればプーチン大統領の年内訪日は可能だ」と言い切っている。このところ、日本のメディアは9月の国連総会に合わせて安倍首相がプーチン大統領と首脳会談を行い、改めて訪日を要請する案が浮上していると伝えている。この際、安倍首相がプーチン大統領に直談判すれば年内訪日も不可能ではないだろう。要は首相がそれだけ腹を据えて、ロシアとの交渉を進める意欲があるかどうかにかかっている。
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