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2015-07-21 02:10
プーチン露大統領の核戦力増強発言の真意とは
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアのプーチン大統領が年内に新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を40基以上配備すると発言したことが大きな波紋を呼んでいる。西側のメディアは「新冷戦に現実味」とか、「米露間に緊張走る」などとセンセーショナルに報道しているが、発信元のロシアでは意外に冷静に受け止められている。プーチン発言の真意はなんなのだろうか。この発言があったのは、モスクワ郊外で先月16日、ロシア国防省が初めて開いた大規模な国産兵器展示会である。いわば軍需産業や軍関係者の集まりでの発言で、大統領としては国内向けに威勢のいい発言をしたともいえる。もちろん、今進行中のウクライナ紛争の当事者や欧米諸国の反応も想定しているに違いない。
問題の新型ICBMを年内に40基以上配備するという計画は以前から決まっていたとの報道もある。だが、プーチン大統領は機会あるごとにロシアの核に言及し、クリミア半島編入問題では核兵器の準備をしたとまで発言、「ロシアが本格的に核使用を検討しているのでは」との懸念を呼んでいただけに、西側が大騒ぎするのも当然である。一方、ロシアのメディアを見ていると、プーチン発言への反応は西側とは違い、冷静すぎる感じさえする。6月17日の英字紙「モスコー・タイムズ」(電子版)に掲載されたイワン・スホフ記者の解説によると、国民はプーチン政権の「サプライズ発言」にうんざりしているうえ、経済制裁が続き、マーケットの関心が薄れているからだという。
また、核兵器は古い世代の人間にとってはキューバ危機などで怖さが分かっているが、若い人たちにとっては「使えない兵器」であり、怖さの実感がないことも影響しているのでは、と分析している。さらに、スホフ記者はロシアが核兵器のパワーについて言えば言うほど、逆に核の弱さがさらけ出されてくると指摘し、「ロシアが新型ミサイル40基以上を配備すれば、国際社会はますますロシアの顔をつぶさないようにしようとは思わなくなるだろう」と結論づけている。
スホフ記者はロシアと旧ソ連諸国の軍事問題を15年以上担当しているベテランだけに説得力がある。プーチン大統領の今回の発言の真意はまだはっきりしないが、ロシアも核兵器にばかり依存して平和への努力をおろそかにしていると北朝鮮同様、国際社会の信用を無くすだろう。
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