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2015-11-04 10:16
北方領土問題は「急がば回れ」だ
飯島 一孝
ジャーナリスト
ユネスコ世界記憶遺産に登録された第二次大戦後のシベリア抑留についてロシア政府は「日本のゆがんだ戦争認識のもとで資料の収集が行われた 」と批判している。一方、北方領土問題についてもロシア側は「日本がまず第二次大戦の結果(敗戦)を認めないと話が始まらない」と言い出している。ロシア側の最近の風潮を見ていると、歴史認識で日本側を追い込み、領土問題のハードルを高くしようとしているのは明らかだ。ソ連崩壊後、初めて来日したエリツィン初代大統領は1993年、シベリア抑留を「スターリンの犯罪」と指摘し、日本に対し明確に謝罪した。ソ連当時、二島返還を定めた日ソ共同宣言(1956年)が現在も有効であると、口頭ではあるが初めて認めたのもエリツィン氏だった。
ところが、最近はラブロフ外相が「日本は大戦の結果を認めない世界唯一の国だ」と非難しているのを始め、出先の外交官まで「日本は公式的にも国民レベルでも、大戦で日本がソ連の戦略の犠牲になったとの認識がある。それを直さないと交渉は難しい」とまで語っている。この背景には、プーチン政権が中国と一緒になって日本の最近の主張を「歴史修正主義」と批判し、国民に愛国主義を訴えようという意図があるからだろう。とくにプーチン政権は西側の経済制裁や原油安で経済が苦境に陥っているため、日本を叩くことで政権の求心力を維持しようという狙いさえ感じる。
今回の世界記憶遺産登録を巡っては、出先のロシア外交官でさえ「ロシア政府がシベリア抑留資料にまでケチをつけるとは思わなかった」と驚いている程で、中央主導型で進められているようだ。こうなると、もし今北方領土交渉が日露の首脳間で行われたとしても、理性的な協議が行われるとは思えない。
安倍首相は相変わらず領土問題を解決し、日露平和条約の締結を急ごうとしているが、現在のようなロシアの状況が続く限り、双方が納得する解決ができるとは思えない。とりあえずウクライナ紛争が解決し、米露の対立が緩和されるまで辛抱強く待つのが得策だろう。急がば回れ、ということである。
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