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2016-01-20 11:44
激化する宗派間の対立について思う
船田 元
衆議院議員(自由民主党)
昨年から続くISに対する有志連合の空爆や、パリでの大規模テロの恐怖が続く中で、世界は新年を迎えた。ここに更なる困難を加えたのは、サウジアラビアとイランの対立である。サウジアラビアは隣国のイエメンを実効支配していた、スンニ派に基盤を持つハディ政権を支持していたが、シーア派の反政府勢力がクーデターを起こし、これを支持するイランとの間で緊張状態にあった。サウジは中東における最大のスンニ派の拠点、一方イランはシーア派の最大の拠点と言われており、明らかに宗派間の対立が背景にある。
特に今回の国交断絶は、サウジ国内のシーア派指導者を政府が処刑したことに端を発している。サウジが以前から続けていた、イエメンの反政府勢力に対する空爆が、同国内のイラン大使館に及んだという情報があるが、まだ確認されてはいない。仮にそうでなくても、両国の緊張は高まるばかりだ。我々は同じイスラム教なのに、なぜこんなにスンニ派とシーア派がいがみ合うのかなかなか理解し難いが、中東で内戦が発生すると、必ずこの対立が関係してくる。シーア派は彼らの指導者は、預言者ムハンマドの子孫であるべきだと考える。一方スンニ派は、指導者はイジュマアと呼ばれる合意によって選ばれるべきだと考える。シーア派は戒律が厳しく、スンニ派はそれほどでもないと言われる。
かつては同じキリスト教徒でありながら、ローマ・カトリックとプロテスタントの間でも、長い間対立があった。今でこそ平和共存しているが、対立の中では数え切れない悲劇も生まれた。世界における宗教、宗教間の対立構造をある程度理解していないと、世界の歴史も、また現在も理解することは出来ない。
しかし同時に、我々は宗派対立が引き起こす混乱や悲劇を、仕方のないことと見逃すことは出来ない。かつての中東諸国は独裁的政権が比較的多く、それにより政治や宗教の安定が図られてきたことは事実だ。これが「アラブの春」と呼ばれる民主化運動によって倒され、政治の空白を招いてしまった。もちろん各国にかつての独裁的政権を再興させることは出来ないが、宗派間の対立に何らかの歯止め装置を作ることが出来ないかと考えるこの頃である。
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