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2016-03-25 06:20
F35配備で敵基地攻撃能力を実現せよ
杉浦 正章
政治評論家
要するに、天から核ミサイルを降らす狂気の指導者が近隣にいる。天から平和が降ってくるなどという専守防衛一点張りの思想など成り立たなくなったということだ。どの国もが持つ敵基地攻撃能力をミサイル迎撃能力と併せ持って、初めて北朝鮮の核から国民の生命財産を守ることができる。これは北がミサイルに原爆を搭載したか、しつつあるとかにかかわらず、必要な戦略である。北が迎撃力を上回る大量のミサイルで「飽和攻撃」を仕掛けてきた場合、例え1、2発でも日本に核ミサイルが到達したら、どうなるかを考えてみるべきだ。おりから日本で組み立てている敵基地攻撃能力のあるステルス戦闘機F35が11月に完成、米軍も来年1月には岩国に配備する。政府・自民党はこれと連動して、高度の政治判断を下すべきであろう。自民党は、3月24日国防部会を開いて敵基地攻撃能力確保の問題について議論を開始したが、イロハのイからのスタートである。選挙を前にして「穏便に」という自民党執行部の方針は分かるが、今頃こんな議論を繰り返しているときか、といいたい。
席上、防衛省の担当者が「従来から法制上は、ほかに手段がないと認められるかぎり、基地をたたくことは自衛の範囲に含まれ、可能としている。ただ、自衛隊は従来から敵基地攻撃に適した装備体系は有しておらず、必要な装備の検討もしていない」と現状を説明。これに対し、出席した議員からは「北朝鮮は複数のミサイルを同時に発射する能力を持っており、『撃たせないようにする』とか『撃つ前にたたく』ということは当然考えなければならない」という意見が出された。また「敵基地攻撃能力の保有を議論することが北朝鮮に対する抑止力になる」といった指摘が出され、引き続き議論していくことになったという。しかし、既に同国防部会は2009年の北朝鮮によるミサイル発射実験を受けて「座して死を待たない防衛政策としての策源地(敵基地)攻撃能力が必要」との結論に達している。こうした意向を受けて、2013年の防衛計画大綱には、「ミサイル発射手段への対応の在り方を検討し、必要な措置を講ずる」と、初めて敵基地攻撃能力について間接的に言及している。もう議論の段階は過ぎた。対応が遅れれば遅れるほど、北の核戦略を利することになる。ただしこの問題は、安保法制のように政権与党だけで進めず、野党も含めて国論を形成する努力も必要だ。幸い民進党右派には元外相・前原誠司のように確信的な敵基地攻撃論者がいる。これらを巻き込んで実施に移す必要がある。
北の核ミサイルの現状は定かではないが、防衛省によると3月18日に発射した中距離弾道ミサイル「ノドン」は、「ロフテッド」と呼ばれる通常よりも高い軌道を描いていたという。おそらく弾道ミサイルの性能向上に必要な大気圏への再突入実験などを意図した可能性があるとみられる。しかし米韓軍事演習に対抗して実施した上陸演習や、ミサイル再突入実験は、まさに噴飯物もいいところだった。米上陸用舟艇を真似したのか、ゴムボートのうえに張りぼてのような被いをつけて上陸したまでは良いが、降りる兵士は皆シャベルを持っていた。よほど古色蒼然の銃器など見せたくなかったかのようである。再突入実験も、先進国では高熱を出せる特殊な風洞を作って行うが、ガスバーナーを集めてレンガ製のの弾頭に炎を吹きかけるという「前代未聞の装置で行った」(専門家)という具合だ。
恐らく金正恩が思いついて急きょ映像を準備させたのだろうが、世界中の専門家によっていっぺんに見抜かれることまで考えが及んでいない。金の知識と判断力のレベルがうかがえるパフォーマンスだった。まさに精一杯背伸びする「弱者の選択」に懸命なのだろうが、馬脚が現れるとはこのことだ。北はミサイルの発射が液体燃料注入でばれると判断してか、固体燃料の開発に成功したと発表したが、これも眉唾ものだ。しかし核兵器を開発しだして10年になる。先進国の開発は小型化に5、6年で成功しており、かなりのレベルに達していないとは言えない。日本を狙うノドン200発に核を搭載すれば、まさに極東の戦略を左右する重大事態となる。冒頭述べたように、飽和攻撃をかけられたらイージス艦や地上配備の迎撃ミサイルをすり抜ける公算が高い。核兵器を搭載した200発のノドンが日本に向けて発射されれば、迎撃が利かない飽和状態となり、必ずすり抜けるミサイルが出てくるのだ。
こうした狂気の行動にでかねない金は、まさにルールを知らない指導者であり、彼による予測不能の事態に対処するには万全の対応をするのが国家戦略のイロハだ。国の安全保障は常に最悪のケースを想定して行われるべきものなのだ。こうした事態に直面して、マスコミにも敵基地攻撃を重視する論調が出始めた。産経が社説で「敵基地攻撃能力の保有検討を始めよ」と主張しているのはあり得ることだが、読売も加わった。社説で「迎撃システムだけで、すべてのミサイル攻撃を防ぐのは事実上不可能だ。巡航ミサイルなど、敵基地攻撃能力の保有についても本格的に検討する時期ではないか」と強調している。安倍は昨年夏の安保国会では「武力行使の新3要件を満たせば法理上は認められる」との認識を表明したものの、「我が国は敵基地攻撃を目的とした装備は保有しておらず、想定していない」と語っている。しかし、次期戦闘機F35は敵基地攻撃が可能である。米軍が岩国へのF35配備を決めたのも、北への先制攻撃を意識したものとみられる。これまで米国は日本の独走を警戒するあまり、敵基地攻撃能力を日本が持つことに消極的であったが、北は米本土を攻撃するミサイル開発に成功しつつある。事態は大きく変わってきているのであり、ここは日米韓協調の態勢確立を急ぐべきであろう。
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