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2016-04-07 06:54
財務省が増税延期で条件闘争か
杉浦 正章
政治評論家
「自分は増税延期だが、首相・安倍晋三は延期したら、総辞職せよ」とは驚いた。民進党代表・岡田克也の主張は天地があべこべだ。そもそも民進党は野田政権がリードして3党合意で10%増税を決め、公約として掲げたのであり、延期すれば公約違反の最たるものは自らの党ではないか。曲がった牛の角をまっすぐにするために、叩いたり、引っぱったりすると、牛は弱って死んでしまうことを「角を矯めて牛を殺す」というが、その最たるものが公明党代表・山口那津男だ。自分の「手柄」としている軽減税率にこだわるあまり、増税延期反対論を声高に発言している。これは選挙母体である創価学会の大勢とはマッチしない。学会の大半を占める低所得層は増税そのものに反対なのであり、増税がなければ軽減税率もない方が有り難いのは当然だ。そしてここに来て、身の危険を感じ始めたのか、財務官僚が“条件闘争”に転じ始めたようだ。
世の中矛盾撞着はつきものだが、消費増税再延期が「アベノミクスの破たんである」という論調は、民進党と朝日・毎日の安倍攻撃の中核となっている。これは、国政を政争の具とする愚論の典型であり、アベノミクスは安倍が旗を掲げ続ける限り破たんしないことが分かっていない。すべてはスティグリッツが官邸の会合で「大低迷」と形容した世界経済の収縮に原因があり、その原因をアベノミクスが作ったわけではない。中国経済の低迷、石油価格の下落は他律的な要因であり、今後世界経済の低迷は3年は続く。それに対応して政策を柔軟に転換させることができるのは自民党政権であり、状況変化に対応出来ずにつぶれたのは民主党政権だ。そもそも企業収益が史上最高となり、事実上の完全雇用を国民が謳歌(おうか)できるのはアベノミクスがあるからだ。保育児童問題も完全雇用からの派生問題であり、安倍政権批判は的外れだ。確かに安倍は、2014年11月18日、消費増税の延期を公表した記者会見で「再び延期することはない。はっきりと断言します。景気判断条項も付すことなく、確実に実施する。3年後に消費税引き上げの状況を作り出すことができる」と発言した。しかし政治は状況の変化に応じて臨機応変の対応をすべきであり、その判断基準は国民大多数の安寧にある。「何が何でも増税するから、庶民は死んでください」というのは、政治ではなく独裁だ。
岡田はNHKで「首相はリーマン・ショックのようなことがない限り、必ず来年4月に消費税を上げると言って解散した。先延ばしは、重大な公約違反だ。内閣総辞職に値する」と発言したが、肝心の増税延期については「苦渋の選択だが、先延ばしも一つの選択肢になる」と述べた。冒頭述べたように「自分は延期してもいいが、安倍はいけない」という小学生でも唱えない論理矛盾を公の場で展開するようでは、“出戻り新党”も先が見えた。民進党にとってジャンヌダルクかと思われた政調会長・山尾志桜里も、自らが代表を務める政党支部の政治資金収支報告書に多額のガソリン代を計上していたことがばれて、高転びに転んだ。検事が脱法行為を働いてはいけない。保育所問題で政権を追及する前に、自分の頭のハエを追うことが先決だろう。焦点の北海道5区の衆院補選に応援で使える状況ではとてもなくなった。どこまでついていない政党なんだろうかとつくづく思う。やはり3年3か月にわたる政権党としての大失政の連続が天罰を下しているのだろう。
公明党の山口も遠吠えが度を過ぎている。「簡単に消費税率の引き上げを先送りすべきではないと思う」と延期反対論を展開しているが、これも群を率いるリーダーとして素質を問われる。先には同日選に反対しながら、安倍との会談後に賛成に転じたが、臆面もなく“転ぶ”人のイメージが定着している。消費増税延期支持は読売の調査で65%に達しており、おそらく創価学会員は大多数が延期支持ではないか。支持母体の真の意向を確かめてから発言した方が良い。そしてここに来て注目の財務省が転向し始めたという話が永田町に伝わっている。同省は「歯止め付きの延期」という条件闘争に変わってきているというのだ。財務省は大蔵省の昔から官邸に対峙して、第2官邸の“権勢”を意のままにしてきたが、安倍官邸の強靱さに折れざるを得ないと判断しつつあるというのだ。場合によっては官邸から人事で仕返しをくらいかねない状況になってきているのが、恐怖感を生じさせているのだ。その条件闘争とは、またまた1年半延ばすというものだという。1年半の延期で2017年4月実施を18年10月実施にする、という説だが、安倍の任期は延長がなければ18年9月だから、「安倍がいなければ、もう延期はない」と判断しているというのだ。まるで政局を知らない官僚らしい対応だ。
財務省は法律に時期を明記して歯止めにするというが、今回の例を見ても法改正されればおしまいだ。官邸サイドからは消費増税凍結論や、何と減税論まで出ている。8%を7%にするとか、5%に戻すなどという説が出ているが、これは財務省へのけん制だろう。いくら何でも減税はないだろうと思う。「社会福祉予算を減らす」と財務省が言い出せば、おしまいだ。凍結があるかどうかだが、2回にわたる延期が物語るものは、デフレ期の増税は成り立たないということである。2018年はオリンピック景気が頂点に達しつつある時期だが、オリンピックが終われば不況がすぐに来る。延期を繰り返すより、いっそ当分凍結した方が効果的ではないだろうか。
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