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2016-05-18 06:02
安倍を攻めようがない民進の理由
杉浦 正章
政治評論家
国会内の議員発言には責任を問われない免責特権があるにせよ、民進党政調会長・山尾志桜里が衆院予算委で首相・安倍晋三に面と向かって「男尊女卑政権」と発言したのは、ひどすぎる。この議員特有の論議のすり替えと自信過剰の断定癖が露呈したものと言える。もしこの国の政権が「男尊女卑」であったら、その政権は憲法第14条違反であり、政権自体がなり立たないことになる。検事出身議員の言う言葉ではない。当選2回生の山尾の起用は代表・岡田克也の起死回生のための人事だが、就任早々に政治資金規正法違反問題が露呈するなど、国会質問の脆弱さが目立つ。民進党にとっては弱り目にたたり目であり、5月18日の党首討論での岡田の“不振”は今からでも予想できる。肝心の消費増税の是非で他の野党と共同歩調を取っているため、「凍結法案」に同調できないからだ。
民進党は政調会長の“教育”をし直した方が良い。そうでないと、いきり立った顔で鼻の穴の大きさばかりが目立つ質問を繰り返すことになる。こっちが男尊女卑と怒られるから言っておくが、美人なのに勿体ないから言っているのだ。男尊女卑発言は山尾の唯一の得意分野である介護・福祉問題で、保育士の待遇問題に絡んで飛び出した。いつも思うのだが、この議員は女性特有とは言わないが、木を見て森を見ない質問に終始する傾向がある。なぜなら山尾は「アベノミクスは失敗した。退陣すべきである」と主張したが、保育士の問題はアベノミクスが成功した結果生じた派生的問題であることに気付いていない。失敗なら、女性の就業率が安倍政権発足後の2013年で過去最高の62.5%に達し、維持するだろうか。産業別では、医療福祉への就業率が大きく増加し、169万人増となっている。保育士は女性がほとんどであり、その待遇問題が派生しているのだ。安倍政権は2017年度から保育士の給与を月額2%(約6000円)引き上げるのに加え、保育技術の高いベテラン保育士に給与を手厚く配分する方針だ。
最高で月給4万円程度上がる方向だ。山尾はこの待遇改善が民進党案の一律5万円でないからけしからんと噛みついている。しかし、世の中介護士だけしか存在しないわけではない。安倍が「段階を追って引き上げると言うことだ。一気に全部と言うことは簡単ではない。簡単ならなぜ民主党政権でやらなかったのか」と反論して、勝負はついた。キーッとなった山尾は「男尊女卑」と言いきった。その後もテレビで「取り消さない」と息巻いていた。法廷なら裁判長が検事に「口を慎むように」と注意を促し、それでも繰り返せば「退廷!」と宣言するケースだ。検事でも強制捜査の段ボール運び専門ではなかったかと思いたくなる。山尾は民放テレビで民進党が煮え切らないままの消費増税の是非を聞かれた際にも、論点をすり替えた。「はっきりしている」と述べたから、固唾をのんだが、なんと「軽減税率を前提にした消費増税は認められない」と発言したのだ。誰も軽減税率のことなど聞いてはいない。民進党が他の野党と同様に消費税増税凍結に踏み切るかどうかを聞いたのだ。
一政調会長の素質などどうでもいいが、民進党の支持率が発足直後から低迷している。新党発足直後にはご祝儀相場で上がるものだが、日テレの調査で支持しないが59.7%。読売の調査で政党支持率は自民党が37%(前回37%)、民進党が6%(同6%)と依然として自民圧勝。なんと安倍内閣の支持率は53%で3%上昇。こんな数字が3年以上も継続する例は、戦後の歴代内閣でも見たことはない。紛れもなく「アベノミクスは成功」と国民の多くが思っている証拠である。一時は「トリクルダウンがない」と批判されたが、大企業の収益が過去最高なのに続いて、中小企業の収益も過去最高になってきた。「トリクルダウンしている」のである。何よりも失業率は18年ぶりの低水準、求人倍率は24年ぶりの高水準の1.3だ。GDPだけでアベノミクス失敗の判断は出来ない。国民生活に密着した指標の方が重要だ。こうした傾向を反映してか、民進党の政権批判は専ら「重箱の隅作戦」しかない状況だ。外交・安保では安倍の親米路線が好感を持って迎えられており、野党は追及のしようがないのが実情だ。とりわけ安倍がもたらしたオバマとの信頼関係は、オバマの広島訪問で結実しようとしている。オバマの広島訪問を「評価する」はなんと93%に達した。外交・安保など全く知らない山尾が質問しないのは無理もないが、オバマの広島訪問で反米野党に寂(せき)として声なしの状況なのは、どうしたことだろうか。
岡田は正直言って、安倍を攻めようがないのが実情だろう。唯一の追及点は安倍が消費増税延期で態度を明らかにしていない点だが、民進党も安倍の出方待ちしか手がない、というジレンマにある。安倍がサミット直後に延期を表明すれば直ちに「アベノミクスの失敗。退陣せよ」と言う戦術だ。山尾が既にこれを述べている。しかし、増税延期をアベノミクスの失敗と結びつけるのは、だれが見てもこじつけだ。民主党のように状況の変化にに対応できない政権は、国を滅ぼすのだ。サミットは景気刺激策の必要では一致し、財政出動も大きなテーマとなる。議長国の安倍がこれに逆行出来るわけがなく、「消費増税は延期して、参院選挙」というのが安倍の残された「サプライズ効果」であろう。民進党はこれに反対して「増税賛成」で選挙が出来るのだろうか。とにかく国民の間には過去の「民主党政権」の羮(あつもの)に懲りて、なますを吹く状態がまだまだ20年は続くのだ。国民が本当に信用していないのだ。
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