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2016-06-30 06:51
都知事候補は安倍が出ないとまとまらない
杉浦 正章
政治評論家
「せこい知事が辞めてせこい女が手を挙げた」と自民党幹部に嘆かれるようでは小池百合子も出はなを折られる。「せこい」もそうだが「嫌な女」という感じがする。だいたい「崖から飛び降りる覚悟」といわれても、年が分かるような表現に同情するメディアはない。小池の立候補の狙いはメディアが湧くと誤算したところにあると見たが、おおむね新聞の報道ぶりは狙いとは逆に好意的ではない。第一に都知事の顔をしていない。世界最大級の都市の顔としてはもう少し締まって、きりりとしていないといけないが、井戸端会議で通行人の邪魔をしているおばさんのようではいけない。客観的に自分がどの程度の人物かが分かるのが良い政治家であるが、小池は分かっていない。
報道が好意的でないのは紙面作りにも現れている。30日の朝日も読売も一面や政治面でなく社会面処理だ。小池の名前の見出しも小さい。なぜマスコミの評判が悪いかと言えば出馬表明が見え見えだからだ。小池は自民党の選考で本命である前総務事務次官・桜井俊の名前が消えたと判断、「そうとなれば自分しかない」と思ったのだ。このタイミングを外すとチャンスがないと思ったに違いない。だから記者会見も唐突であり、都連会長の石原伸晃への連絡もない。事前に立候補するらしいという情報を入手した石原は、小池に電話をかけたが居留守を使って電話に出なかった。わずかに出馬表明5分前に都連幹部の衆院議員・平沢勝栄に「これから記者会見で出馬します」と通告しただけだ。この事実は、いかに小池が都連から無視されていたかの裏返しでもある。
もちろん会見では都政へのビジョンを語るわけでもなく、唯一目立った発言が次回の都知事選がオリンピックにぶつかることを理由に「任期を3年半にする」と述べた事だ。しかし今期の都知事はまさにオリンピックをやるための都知事であり、9割方準備が完了した段階で「辞任」の選択はない。むしろ知事職を継続して責務を果たそうとするのが最重要ポイントであるはずだ。これを見誤るようでは、都知事候補としてまず失格と言わざるを得まい。自民党内で人気が沸かないのはかつての小沢一郎側近という経歴もある。とにかくすさまじいほど政党を転々としている。最初は細川護煕の日本新党、次に新進党で小沢にすり寄り、自由党分裂で小沢と決別、保守党を経て自民党という経歴。まるで歌謡曲「流れの旅路」である。だから自民党内には全く信用がない。
したがって政府・与党は苦り切っている。官房副長官・萩生田光一が「都連に何の相談もなく出馬表明をすることには違和感を覚える」と発言したが、「違和感」とはぎりぎりに抑えた表現であり、相当な憤りがあることを物語っている。首相・安倍晋三も内心では怒り心頭に発していいるらしい。したがって官邸からは「小池は300%ない」といった声が聞こえる。小池が踏み切った最大の理由は桜井の不出馬にあるが、桜井は本当に完全に消えたのだろうか。まだ手段があるような気がする。それは安倍本人が裏で打診していない事に尽きる。官僚が首相から頼まれればまず「ノー」とは言いにくい。表に出るときは手打ちの合意会談だが、裏で説得出来るのは安倍しかいまい。29日は石原伸晃が直接説得を試みたが、ネガティブであったようだ。しかし朝日によると「都連関係者は『固辞されたというわけでもないようだ』と漏らしている」という。まだ完全にあきらめきってはいないようだ。桜井が出馬となれば、小池の出馬もすっ飛ぶだろう。
一方で最強と言えた蓮舫に逃げられた民進党も、これはという候補はなく、混沌としている。都連が有力候補としたのは前鳥取県知事の片山善博だが、本人は否定している。反安倍の評論でコメンテーターとして目立つが、自公優勢の都議会を思えば本人は知事孤立へと思いが到るのだろう。都連は党内から擁立する場合の候補として江田憲司、長島昭久、柿沢未途、海江田万里の名前を発表したが、いずれもカリスマ性に乏しく、「勝つ候補」にはなりにくいだろう。元日本弁護士連合会長・宇都宮健児も本人にはやる気があるが野党4党の共闘だと難しいとみられている。
立候補すれば蓮舫なき後の知事選で最強の集票力があるのが前大阪市長・橋下徹だ。本人は「はっきり言いますが出ません」とネットで宣言しているが、出ないと言って出るのが橋下。このケースも殿・安倍のお出ましが必用だ。盟友関係にある安倍か官房長官・菅義偉が説得すれば動くかも知れない。桜井も橋下も殿の下知を待っているのかも知れない。裏で動くべきだ。
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