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2016-08-07 00:11
今、再び「対中外交の4本柱」を提起する
北原 二郎
会社員
広島への原爆投下の日の8月6日に、尖閣諸島周辺で230隻の中国漁船が遊弋し、7隻の中国公船が日本の領海のすぐ外側にある接続水域を侵犯したとのニュースが飛び込んできた。正直な感想としては「予想通りの動きである」と感じるとともに、政府の対応が「後手に回る」のではないかとの危惧を感じ、ここに拙論を展開する。この問題については、今から4年前の2012年の8月から10月にかけて、「この際日本はその対中戦略を再構築せよ」、「尖閣諸島への中国海洋監視船6隻来襲は序章にすぎず」、「『得寸進尺』の隙を中国に与えてはならない」、「尖閣問題は時間との勝負」等の投稿をさせて頂いた。そこで提案したのは、「日米安保体制の強化」、「言論戦」、「国際司法裁判所の活用」、「実効支配の強化」を4本柱とした対中外交の強化策であった。いま、その後の動きを踏まえて、改めてこの問題を考えてみたい。
まず「日米安保体制の強化」だが、これは安倍政権の下で進んだ日米安保体制の「立て直しの動き」により相当進んだと考える。アメリカ議会での安倍総理の演説、戦後70年の安倍談話、そして本年のオバマ大統領の広島訪問と続く「三部作とも言える外交的成功」がそれを象徴している。「言論戦」については、さしあたり南シナ海を巡る動きがあった。すなわち、フィリピンの提訴に基づく常設仲裁裁判所の決定があり、「九段線」に代表される中国の南シナ海領有権の主張が真向から否定された。この決定前に開催された伊勢志摩サミットでもG7諸国は南シナ海を巡る「法の支配」の強化で意見一致している。「国際司法裁判所の活用」については、これまでの外務省見解は「尖閣諸島は、日本固有の領土であり、領土問題は存在しない。日本が国際司法裁判所に提訴することは、領土問題の存在を認めることになる(ので、行わない)」という内容であったが、再考をお願いしたい。フィリピンの例に倣い、相手国の同意を必ずしも必要としない国際海洋法条約に基づく仲裁裁判所への提訴も有効かもしれない。日本に有利な「言論戦」につなげることが重要である。そして最後になるが「実効支配の強化」である。これは2012年10月14日の拙論の中でも指摘したように、「自衛隊の駐留」「米軍との共同管理レーダーの設置」「船だまりの建設」を進めることが重要がある。そして、このステップに進むためにも、他の3つの柱は欠かせない。
2012年10月15日の拙論において私は、「先の国連総会における中国外相のヒステリックとも受け取れる演説からは、彼らにとって最も不利なのは国際司法裁判所や多国間交渉を日米優位の現段階において活用されることであり、逆に彼らにとって最も有利なのは増大する軍事力・経済力を背景に『海上の実効支配』を今後更に強め、圧倒的優位に立った段階で日本に妥協を迫るという、正に弱肉強食のマキャベリズムに基づく二国間交渉であろう。相手は合従連衡の国、中国である。アメリカからは尖閣諸島の主権についてはすでに『中立』との言質を既にとっている」と述べた。そして、本年のアメリカは大統領選挙の年であり、現在南シナ海で展開されている「航行の自由作戦」以上の関与は期待できないであろう。そのため、中国が漁船団保護に名を借りた露骨な領海侵入などの行為をエスカレートさせる惧れが大いにある。それを踏まえ、4年前に述べた「4本柱の外交」論を再度ここに展開させて頂いた。尖閣問題はまさに時間との闘いである。国土を守る強い覚悟をもって、戦略を組み立てることこそが、現在の日本にとってもっとも喫緊の課題である。
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