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2016-11-11 17:46
日米安保なき日本の総合安全保障
四方 立夫
エコノミスト
遂に悪夢が現実のものとなった。我が国としては、トランプ氏と新たな関係を構築し、日米関係を強固なものとすべく、最善を尽くすことは当然であるが、仮に我が国が同氏の選挙キャンペーン中の主張である日米安保条約に基く負担増を受け入れたとしても、それにより同盟の信頼性が維持されるかについては、一抹の不安を感じる。
米国のビジネス界は1980年代より中国に熱い視線を送り続けており、昨年の習近平主席の訪米に際し普段はスーツを着ることのないIT業界の大者がスーツ姿で勢揃いして出迎えたことは、米国企業の中国に対する強い期待を象徴する出来事であった。長年に亘りビジネスの世界に身を置いたトランプ氏が中国の巨大市場としての魅力を見過ごすはずはない。仮に尖閣諸島をめぐり日中間に紛争が勃発した場合、オバマ大統領は「尖閣諸島は安保条約の適用範囲」と明言していたが、その発言をトランプ氏が実行に移し、世界第二位の経済大国である中国と事を構えるような行動を取るかは疑問無しとしない。
キッシンジャー博士は、その近著”World Order”の中で中国をパートナーであると明言する一方、日本に対しては懸念を示唆している。仮にヒラリー・クリントン氏が大統領になったとしても、米国民が極東の名前も知らない小島の防衛のために米軍を派遣し、イラク、アフガニスタンに続き東シナ海でも泥沼化する怖れの高い紛争に加担することを支持するかは、懐疑的である。
かかる状況下、我が国は日米安保の維持、強化に全力を尽くす一方、その努力が有効に機能しない場合に備え、「自らの国は自ら守る」という人類普遍の大原則に立ち返る必要がある。軍事、外交、経済などの総合力により相手国の侵略意図を事前に抑止し、「戦わずして勝つ」戦略の構築が喫緊の最重要課題である。「軽武装、経済重視」の吉田ドクトリンに則り、「日本は米国に基地を提供し、米国は日本を守る」の日米合意を長年に亘り当然視してきた日本国民が、安全保障の現実に覚醒するのは今をおいて他にない。
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