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2017-03-23 12:46
求められているのは、我が国自身の防衛努力の強化
四方 立夫
エコノミスト
2月の日米共同声明に「日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認した」との文言が盛り込まれたことにより、日本国内では引き続き「米国が日本を守ってくれる」との安堵の空気が流れたが、同声明には「日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす」ことが明記され、更に、その中に引用された「日米防衛協力のための指針」の中には「日本の防衛は日本が主体、米国はそれを支援し補完する」との基本方針が繰り返し明示されていることを忘れてはならない。北朝鮮による在日米軍基地をターゲットとしたミサイル発射実験が成功し、この1年間で同国の核とミサイル技術は飛躍的に向上しており、同国の脅威は新たな次元に突入した、と言わざるを得ない。
ティラーソン国務長官が日本、韓国、中国を訪問し北朝鮮の脅威に対し「あらゆる選択肢」を持つことを明言したにも関わらず、中国は依然として北朝鮮に対し断固たる処置を取ろうとしないことから、北朝鮮の挑発が更に一歩進み米国本土に到達するICBMの実験に踏み切ることになれば、米国による北朝鮮に対する先制攻撃の可能性は現実のものとなるかもしれない。その場合、在日米軍基地並びにその周辺地域は北朝鮮の直接の反撃を受けるリスクが高まる。一方、米国の同盟国である韓国では5月の選挙で北朝鮮及び中国に融和的な政権が誕生し、THAADの配備撤回、GSOMIAの破棄、北朝鮮との「対話」などの政策が取られる怖れがあることから、益々我が国に対する北朝鮮の直接的な脅威は増すこととなる。
先ずはSM3及びPAC3によるミサイル防衛体制を固めると共に、同時に実行されると推察されるサイバー攻撃に対し関係省庁並びに民間企業において備えを進めることが喫緊の課題である。このことがより大きな脅威である中国に対する我が国の防衛力を向上させると共に、日米同盟の強化にも貢献するものである。一方、トランプ政権の対中政策はキャンペーン中の”Day 1”に「中国の輸入品に45%の関税を掛ける」、「中国を為替操作国に指定する」との「公約」は未だ実行されず、習近平との電話会談以降むしろ米中要人の往来が加速し、4月にはホワイトハウスではなく「冬のホワイトハウス」で初の米中首脳会談の開催が計画されている。トランプ政権が短期的経済利益のために中国に不用意に接近し、東シナ海/南シナ海問題並びに北朝鮮問題に関し安易な妥協をし、同盟国及びアジア諸国の不安を煽り、中長期的にアジアにおける航行の自由及び市場へのアクセスを妨げ米国自身の経済利益を損なうと共に、既存の自由主義圏の貿易/投資のルールが中国主導のものに置き換われていく怖れも無しとしない。
何れにせよ今後益々増大する我が国を巡る様々なリスクに対応するには、先ず我が国自身がその防衛力を強化しないことにはどの国も我が国に協力しようとしないことは明らかである。我が国が民主主義国家である以上、かかる政策は国民の広範なる支持無くしては実効できない。政官民を挙げて70年以上に亘り平和を甘受してきた国民に対し、北朝鮮並びに中国は眼前の危機である、との認識を醸成させることも合わせ喫緊の課題である。
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