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2017-08-31 06:27
米有力紙WSJが日本の核武装に言及
杉浦 正章
政治評論家
筆者は昨日北の核ミサイル保持で敵基地攻撃能力の必要を書いたが、今度は米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が30日、「日本の核武装に道を開く北朝鮮の核容認」と題する社説を掲載した。米政権が「北の核を容認すれば遙かに危険な世界を容認することになる」と警告を発している。WSJは長年にわたりアメリカ合衆国内での発行部数第1位の高級紙であり、世界80カ国以上、100都市以上に支局を構え、創立以来、経済史のみならず世界史に名を残すようなスクープ記事を度々掲載している。米政府や世界各国に及ぼす影響はニューヨークタイムズやワシントンポスト以上だ。この社説がトランプ政権に影響を与えることは必定であろう。同紙はまず北のミサイル実験について「日本北部の住民は29日、北朝鮮のミサイル発射を知らせるサイレンや携帯電話のアラートにたたき起こされた。この中距離ミサイル発射実験は、北東アジアの安全保障をめぐる政治を一段と混乱させるだろう。そして、日本に自前の核抑止力を持つことをあらためて促すものだ」と強調、“日本核武装の可能性”を予測している。
次いで「日本の最終的な安保は米国の防衛力と核の傘だ。日本が攻撃を受けた場合は米国が反撃することが、日米安保条約で保障されている。しかし、抑止力の論理は敵が合理的であることを前提とするが、北朝鮮相手に合理性は保障され得ない。米国を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発も、この均衡を変化させている。北朝鮮が東京を攻撃し、これに応じて米国が平壌を攻撃すれば、米国の都市が危険にさらされかねない」と指摘している。つまり北のICBM開発が終局的には米国の都市攻撃に直結すると読んでいるのである。そして社説は「日本の指導者たちはこれまで、自ら核兵器を保有することに長らく抵抗してきた。しかし、危機に際して米国が頼りにならないとの結論に至れば、この姿勢が変わるかもしれない。あるいは日本として、たとえ信頼できる同盟国の判断であっても、それに自らの生き残りを託す訳にはいかないと判断することも考えられる」と日本核武装の“理由”に言及した。加えて「既に日本の一部の政治家は、独自の核抑止力について話し始めている。世論は今のところ核兵器に反対だが、恐怖で気が変わる可能性もある。日本には民生用原子炉から得た核弾頭1000発分を超えるプルトニウムがあり、数カ月で核弾頭を製造するノウハウもある」と、日本が保有しようとすればすぐにも核保有国になれると予測している。
そして日本核武装が中国を警戒させ韓国も即座に追随しかねないとして「東アジアが中東に続いて核拡散の新時代を迎えれば、世界の秩序に深刻なリスクをもたらす」と警告、「それもあって、核ミサイルを持つ北朝鮮を黙認することはあまりに危険なのだ」と強調している。にもかかわらず米国内には北の核ミサイル容認論があるとして社説は、バラク・オバマ前政権で国家安全保障担当の大統領補佐官を務めたスーザン・ライスと元国家情報長官ジェームズ・クラッパーの名前を挙げて批判。とりわけ「クラッパーは、『米国が(北朝鮮の核保有を)受け入れ、制限ないし制御することに努め始めなくてはならない』と話している」ことを明らかにした。「8年にわたって北朝鮮の核は容認できないと話していたはずの両氏が今や、トランプ大統領と安倍晋三首相はそれに慣れた方がいいと言っているのだ。しかし、どうやって『制御』するのか」と問題を投げかけている。
最後に「北朝鮮は交渉で核計画を放棄する意向がないことを明確に示してきた。米国は「相互確証破壊(MAD)」で脅すことはできるが、日本上空を通過した今回のミサイル実験は、北朝鮮が米国と同盟国を威圧・分断するために核の脅威をいかに利用するかを示している。北朝鮮の核を容認すれば、はるかに危険な世界を容認することになる」と結論づけた。この社説は北東アジアの安全保障の構図をよく理解しており、今後トランプの戦略や日本の方針に強い影響をもたらし、世界的に日本核武装の是非論が台頭するだろう。
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