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2007-05-15 09:26
NHKだけは、2011年以後もアナログTV放送を続けよ
角田勝彦
団体役員・元大使
一月下旬の「国際的発信力の強化のために」と題する投稿で、私は、NHKは国際社会における日本への理解を促進させ、かつ日本人の国際問題の理解を助ける役割を中心的任務の一つに置くべきであると論じた。その関連で、NHK受信料の支払い義務化と2011年7月のアナログ放送停波にも触れた。マクルーハンによれば伝統的文字文化の認識・思考様式に変革をもたらしたとされるテレビの重要性は言うを待たない。メディアとしてはその後インターネットなどが重要性を増しているにせよ、NHKなどテレビ局が持つソフト作成機能ははるかに高い。とくに日本人の国際問題の理解を助ける上でテレビが果たす役割には代え得るものがない。
この点からも、2011年7月アナログ放送停波には疑問を持たざるを得ない。 一言で言えば、2011年7月以降、テレビを見られなくなる多くの国民が生じるのを放置しておいて良いのかという問題である。今、日本には1億2000万~3000万台ほどのテレビがあるといわれる(平成17年世帯数は4700万)。なお、ほかにビデオなど数千万台のアナログ機器があると見られる。2011年7月以降、これまでのアナログ放送に対応したテレビやビデオは、デジタル放送に対応したチューナー(かなり高い。画質はアナログ並み)を増設しなければテレビ放送を視聴できなくなる。
ラジオでFMが始まったからAMは止めにするという話は通るまい。なぜテレビでは、こんな話になるのかと少し調べてみたが良くわからない。ただし、本件は、総務省の独走(2001年7月に施行された「電波法の一部を改正する法律」で決まった)で2011年アナログ放送停波は実現不可能との強い意見があるのは知ることが出来た。3月の総務省調査によれば、地上デジタル(地デジ)対応受信機の世帯普及率は28%(アンテナなどを付け実際に地デジを視聴しているのは22%)である。前途遼遠である。発信者側でも、地デジに必要な多額の設備投資に苦しむ民放は、2011年段階で地デジ放送を全世帯の2割(900万世帯以上)に届けられない可能性すらあるといわれる。
私はデジタル化に反対するものではない。個人的には普通のテレビで用は足りているが大画面高画質などデジタル放送のサービスや特徴を否定するものでもない。今の世の中でテレビを見られなくなる国民(難視聴地域住民や経済的困窮者)を作るような政策が許されるのかと言っているのである。2億台近くのアナログ機器ももったいない。解決策は簡単である。NHKが2011年7月以降も、デジ放送と別に、一つのチャンネルだけでよいからアナログ放送を続けることである。もちろんソフトは独自製作の必要はなくデジ放送の中から選べばよい。受信料は取りやすくなるだろうし、視聴率はアップするだろう。これこそ国民のための公共放送にふさわしい仕事である。
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