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2018-01-09 00:22
安倍3選で3000日突破の政権維持へ
杉浦 正章
政治評論家
世の中“1億総保身時代”であるかのようだ。従って政治情勢を断定するような政治評論家などいない。外れれば大恥とびくびくしている。だから明確な予測を出す者など皆無だ。正月の愚かなる民放テレビ番組の“くっちゃべり”を見てつくづくそう思った。ところが何を隠そう小生は、今流行の西郷どんが「命もいらぬ、名もいらぬ、地位も金もいらぬというような人物は処理に困る」と述べた類いの評論家なのだ。あえて“寸前暗黒”に光を当ててその有り様を断定するタイプなのだ。そこで新年から安倍官邸のどこかに“蟻の一穴”がないかと、ウサギの耳を長くして、鵜の目鷹の目で情報を集めたが、どこにもなかった。安倍政権は兎の毛で突くほどの隙も見せていない。だから予言しておく、9月の総裁選は安倍が3選を果たす。ということはさらに3年の任期が保証され、安倍は前人未踏の3000日を超える長期政権となる見通しだ。最大の理由は過去の長期政権がそうであったように経済面での好調が継続するからにほかならない。このように強い経済を背景に持った政権は与党内部はもちろん野党も突き崩せないだろう。政局は仕掛けたものが弾き飛ばされる状況なのだ。
アベノミクスはまさに絶頂期に入ろうとしている。すでに安倍政権の12年12月に始まった景気回復は、昨年9月で65年11月~70年7月までの57カ月間に及んだ「いざなぎ景気」を抜いた。今年の景気上昇は新年に財界人全てが予想したように持続発展し、以後は2000年までオリンピック景気がこれに上乗せされる。史上空前の「天孫降臨景気」が続く。雇用は史上初めて1人に対して正社員の有効求人倍率が1に達した。希望すれば正規社員になれる時代となった。東京での倍率は2であり、全国的にも1.5と好調だ。問題は9月の総裁選でこの盤石の態勢を突き崩すという無謀なチャレンジをする候補がいるかどうかだが、いることはいる。もっとも、ハムレットのように「立つべきか立たざるべきか、それが問題じゃ」と悩んでいるのが政調会長岸田文雄だ。やいのやいのと突っつくマスコミに「政治状況を見ながら直前に考える」ともっぱら慎重姿勢を維持している。しかし宏池会の長老古賀誠は主戦論だ。かつて安倍の対抗馬として野田聖子を擁立しようとして暗躍、失敗したのも古賀だった。今度は岸田擁立でまたも暗躍している。昨年末には限られた人数の会合で超オフレコで「総裁選ではビジョンを打ち出して安倍と争う」と擁立をほのめかした。しかし岸田本人は“禅譲”期待が垣間見える。この禅譲方式は戦後度々登場している。その主なものは岸、佐藤、福田康夫政権末期にささやかれた。岸は大野伴睦に禅譲の密約をしたが、結局譲らず大野は憤死した。佐藤末期に福田赳夫への禅譲説があったが、田中角栄に力で封じ込められた。成功したのは福田康夫が麻生太郎への禅譲を約束して、実行に移したことだけだ。それでは安倍が岸田に禅譲をほのめかしたかというとその気配は全くない。岸田が立候補するかどうかをギリギリまで決めないのは、禅譲期待があるからにほかならない。禅譲といっても4年近くも待てるかどうかだ。もともと、政権とは戦い取るものであり、棚から落ちるぼた餅は他人に食われるのが落ちだ。
5年前の総裁選で地方党員票のトップに立って一時は安倍の心胆を寒からしめた石破茂は、間違いなく立つ。地方党員票の比重が強化されているから、なおさらやる気十分に見える。しかし、今回も地方票でトップに立てるかというと情勢はそう甘くない。5年前の自民党は一野党としての総裁選であったが、今回は総理総裁たる安倍を敵に回すことになる。政権奪取に直結する総裁選なのだ。地方党員は、5年にわたる安倍治世で、陳情その他に多大の効果を発揮できる構造的な利点を熟知しており、党内野党の石破を応援すればその道は断たれるのだ。それを承知で安倍を見限る者は、よほどの偏屈か異端者でしかあるまい。その構図を反映するかのように石破派はたったの20人にとどまっている。立候補の推薦人確保がやっとの人数だ。人望欠如のように見える。したがって、石破政権の目は出ないだろう。
「男は一階勝負する」と佐藤3選にチャレンジしたのは三木武夫だが、「女は2度目の勝負する」のが総務相野田聖子だ。民放の出馬するかの問いに「ハイ」と軽々しくも飛びつき「推薦人20人を確保した場合勝算は前回と比較すれば150%」とほらを吹いた。そもそも野田の立候補には“甘え”がある。総裁選を子供の運動会の二人三脚に親が出るくらいに軽く考えている。閣僚でありながら首相をひきづり降ろそうというというのが野田のケースであり、出るなら当然総務相を辞任してから出馬表明するのが憲政の常道だ。諸外国に比べて日本の政治は一流だが、女性政治家のレベルはアフリカあたりの発展途上国より低い。ここ1、2年でも不倫の山尾志桜里、暴言の豊田真由子、自衛隊日報問題で辞任の稲田朋美など資質を問われるケースは枚挙にいとまがない。小選挙区の場合女性候補というだけ票が増える傾向があり、東大卒などというどうでもいい肩書きがけっこう利く。それでも女性議員の比率は衆院で10%と世界平均の半分であり、世界193か国中163位だ。有権者はもう女性だから当選させる時代は去りつつある。野田は立候補の弁で「敵味方というのではなく、安倍首相の掲げる政策を認めつつ、それではたりないという思いがある」と述べているが、これも甘い。オリンピックは「参加することに意義がある」と述べたのはクーベルタンだが、総裁選は首相の存在意義を全否定することであり、まさに敵と味方なのだ。女の甘えがたらたらの野田ではこの国の政治のかじを取ることは難しい。一方、野党は自民圧勝でまたまた脳しんとう。当分政局を語る場には出てこない。通常国会ではまたも森友・加計問題をぶり返す方針のようだが、国民はもう聞き飽きた。同問題は解散・総選挙で有権者が「疑惑なし」と判断したから安倍が圧勝したのだ。ぶり返すことは政権の追及方法を知らない、野党の無力さの象徴である。小泉進次郎は希望の星だが、今総裁選でうろちょろする時ではない。まだ10年早いと思って雑巾がけに汗をかくことだ。
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