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2018-03-30 11:41
米国の新外交・安保体制は成功するか?
鍋嶋 敬三
評論家
米国のドナルド・トランプ大統領が国務長官、国家安全保障担当補佐官を相次いで解任、閣僚の更迭も続く中、次は最側近の首席補佐官か?との噂も絶えない。政権内の最重要ポストの度重なる更迭は大統領との路線対立だけでなく、激しい性格のトランプ氏とソリが合わない感情的な対立も背景にある。米ブルッキングス研究所によれば、トランプ政権発足後、14ヶ月間にホワイトハウスの最高レベルの離職率は解任、辞職、配置換えなどで48%という高率だ。政権最初の2年間でオバマ政権は24%、G.W.ブッシュ政権は33%だからトランプ政権の激しさが浮き彫りにされる。特に最上級の12ポストのうち7ポストで入れ替えが行われた。このような高い離職率は政権の混乱と組織運営の非効率をもたらし、「大統領の課題遂行をますます困難にしている」(同研究所報告)と指摘されている。
トランプ政権の外交・安全保障体制の動揺は、北朝鮮問題で米中を巻き込んだ激しい駆け引きが展開される中、同盟国の日本として大きな懸念を持たざるを得ない。R.ティラーソン国務長官の解任は北朝鮮やイランの核問題、中東政策を巡る大統領との路線対立のほか、個人的な確執も影響したようだ。同氏が昨秋、同僚との会話で大統領を"moron"と呼んだことがきっかけだ。日本の新聞では「ばか」と訳されているが、英語辞書によればまともな判断能力に欠ける人を指す言葉とされる。トランプ氏は「決して許さない」と息巻いたと側近の話として伝えられる(ニューヨーク・タイムズ紙)。後任のM.ポンペオ中央情報局(CIA)長官は保守派運動の「ティーパーティー(茶会)」の下院議員を経て就任、大統領と思想的に近い。
ポンペオ長官をよく知るシンクタンク、ハドソン研究所のK.ワインスタイン会長は、同長官が深い洞察力、経験、偏見のない戦略的な考え方からレーガン政権のG.シュルツ氏以来の名国務長官になる可能性があると高く評価している。下院議員時代の情報特別委員会委員やCIA長官として北朝鮮の核・ミサイルの脅威、金正恩体制についての洞察、多くの意見を丁重に聞く姿勢などから、激動の時代に必要な戦略目的を持って決然と行動できると、期待を表明した。また、ロンドンの王立国際問題研究所のX.ウィケット米国部長は北朝鮮、イラン、ロシア問題に対していずれもタカ派だが、大統領との良好な関係から外交政策はより一貫したものになるだろうと予測している。
J.ボルトン新国家安全保障担当大統領補佐官は、国務次官(軍備管理担当)や国連大使当時からイランや北朝鮮に対する強硬なタカ派で鳴らした論客で、保守派の応援団は「今やタカ派の出番だ」と意気込んでいる。保守陣営の期待を背負っての登場だが、成功のカギはホワイトハウスや各省庁とうまくやっていけるかにかかる。国務次官当時、意見の合わない職員を顔を真っ赤にして怒鳴りつけ、役所を辞めさせようとした事件がいまだに語り継がれている。協調性をどう発揮するかが成功の第一のカギだ。特にホワイトハウスで実力を振るう大統領の女婿のJ.クシュナー氏と折り合いを付けなければならない。ボルトン氏が進める政策をクシュナー氏の助言で大統領が覆すこともあり得る。原則に厳しいボルトン氏がこれに抵抗し大統領がクビにする事態も「1年以内に起こり得る」(D.ザケイム元国防次官)という。安倍晋三首相は朝鮮半島を巡る激しい動き、貿易戦争の瀬戸際の最中、4月中旬の日米首脳会談に臨むが、米政権中枢の外交、安保チームの立て直しの成否は日本にとっても重大な関心事にならざるを得ない。
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