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2007-06-01 16:55
日本ポイ捨ての危機
田久保忠衛
杏林大学客員教授
5月30日付の「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」紙に載ったジョージ・ワシントン大学のデービッド・シャンボウ教授の一文は衝撃的だった。副題「アジアの将来は中国とインドにあって、日本にはない」でわかるとおり、米国のアジア政策は日米同盟を中心にした政策から中国、インド重視へと大転換すべしというのである。
日本がポイ捨てされる理由は二つだ。中国とインドが急速に台頭してきたのと日本の存在感の薄さである。シャンボウ教授は「アジアの将来は日本でなく中国とインドである。おまけに、日本は『歴史』問題によってこの地域におけるアイデンティティと影響力で致命的な傷を負っている」と書いている。
この一文はいろいろ問題を含んでいる。中国とインドの台頭は経済、軍事を中心とした国力を指すのかどうかはっきりしない。日本が中国とインドに経済力で簡単に遅れをとるとは考えられないが、軍事面ではとてつもない欠点を持っている。日本の自衛隊は武器、装備の面はともかくとして制度、法制などの点で通常の軍隊とは異なる。だからシャンボウ教授の指摘は半分は正しいし、あとの半分はよくわからない。
「歴史認識」は村山談話、河野談話、天皇陛下のお言葉、首相発言など戦後繰り返し謝罪してきた。「罪の償い」の意味も込めて国民が血税をODA(政府開発援助)の形でどれだけ支払ってきたか。中国や韓国ははっきり言ってこうした日本の態度を外交に十分に利用してきたと思う。謝罪すべき点とすべきでない点を厳密に区別し、日本の真意がわかる意思表示をしてこなかった歴代の日本政府が犯した罪は小さくない。シャンボウ教授の真意はいまひとつ判然としないが、「謝罪を繰り返しているうちに日本のアイデンティティも影響力もなくなってしまった」とも読める。
とにかく、こんな日本に誰がしたか――と気が滅入るようなシャンボウ教授の一文だ。
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