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2018-09-19 05:29
安倍3選につけいる隙がない自民総裁選
杉浦 正章
政治評論家
政局が自民党総裁選を軸に動き始めた。総裁・安倍晋三が20日に再選される方向は間違いないが、水銀柱の下降と反比例するかのようにボルテージが上がりはじめた。対立候補石破茂派の農水相斎藤健が「安倍陣営から石場さんを応援するなら辞表を書いてやれと言われた」と「圧力」を暴露。安倍は石破とのテレビ党論で「あるはずはない。そういう人がいるのであれば名前を言ってもらいたい」と全面否定したが、石破は「被害者に名乗り出よというのは財務相のセクハラ疑惑に似ている」とかみついた。自民党幹部らが「まあまあ」とおさめたが、近頃にない“茶番”が見られて、茶の間は喜んだ。
それでは総裁選の展開を予想すると、石破にとっては200票を上回るかどうかが今後の展望が開けるかの分岐点となる。総裁選は議員票405票と地方票405票の合計810票の奪い合いとなる。安倍の圧勝は決まっているが、得票によって政治的効果に大きな違いが生ずる。安倍は議員票では80%350票を突破する勢いであり、石破は自派と竹下派を加えて50票前後がよいところだろう。地方票で安倍は、70%突破を目指すことになる。少なくとも国会議員票と地方票の合計は70%に達したい考えだ。安倍が70%をとれなければ石破に200票獲得を許すことになる。安倍が55%を下回った場合は石破が250票を上回り今後に存在感を示すと言って良い。従って焦点はまず石破の200票超えが実現するかどうかだ。しかし、石破人気が沸くにはほど遠く、超えなければ石破は政治的に大打撃を受ける。地方票の動向も最大の見所だ。6年前の総裁選で石破は55%を獲得している。安倍選対事務総長の甘利明が「55%を超えたい」という理由はここにある。しかしこのパーセントは安倍がまだ首相になっていない時点であり、首相・総裁としての存在感を示している現在ではラインを低く設定しすぎだろう。議員票で80%取っておきながら、地方票で55%そこそこでは、永田町と一般党員との乖離(かいり)が目立つことになる。
投票結果がどうあれ総裁選後の内閣改造はあるのかが焦点となる。安倍は16日のNHK番組で「来年は皇位の継承もあり、G20(主要20カ国・地域首脳会議)と、その先に東京五輪・パラリンピックがある。しっかりした人材を登用したい」と述べ、3選を果たした場合、内閣改造・党役員人事を行う方針を表明した。人事をほのめかされては入閣候補らの動きは当然安倍に向かう。巧妙なる“一本釣り”だ。首相の信任にとって最も重要なポイントは景気の動向だが、安倍の就任以来戦後まれにみる好景気が継続しており、石破はつけいる隙がない。昨年末には、安倍が首相に就任した2012年12月に始まった景気回復局面が高度成長期の「いざなぎ景気」を超えて戦後2番目の長さとなったことが確定した。今の景気回復が2019年1月まで続けば、02年2月から73カ月間続いた戦後最長の景気回復を抜く。戦後最長の景気を維持しようとする首相を降ろそうとすれば、降ろす方が“悪人”となる。石破の人相はどうみても良いとは言えず損している。
一方安倍の地球儀俯瞰外交は、歴代首相の中でももっとも活発であり、これもつけいる隙がない。同外交は安全保障と経済の両面から戦略的見地に立って推進している。その「積極的平和主義」路線は「一国平和主義」から脱して、世界平和を俯瞰して、必要ならば自衛隊の活用を含め貢献する形だ。しかし難題は日米関係だ。トランプは、中国からの輸入品すべてに制裁関税を課す可能性に再び言及した。3弾の関税発動を24日にも最終判断するが、早くも「第4弾」をちらつかせている。トランプの対中関税攻撃はとどまるところを見せない。中国も対抗措置を取っており、貿易戦争がさらに激しくなる危険をはらむ。日本も対岸の火災視できない。中国で製品を作って対米輸出している日本企業も多いし、トランプは例外を認めない姿勢だ。この“荒ぶる”トランプをどうなだめるかは、安倍とトランプの個人的な関係が重要となるだろう。日米両国は首脳会談を9月25日に米国で行う方向で調整に入った。米ニューヨークでの国連総会に首相が出席するのに合わせて開くが、これまでにない難問を抱え、世界が注視する会談となりそうだ。
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