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2018-10-09 17:43
羽田新ルート問題で欠けている議論
橋本 宏
日本国際フォーラム顧問/元駐シンガポール大使
2020年東京オリンピックに関連し、日米地位協定のもと「横田空域」管理権が在日米軍に委ねられているため羽田新ルートの実現が危ぶまれているとの議論が最近広く行われている。その関連でドイツやイタリアと比較して日米間の地位協定では日本の主権制限の度合いが大きすぎるとの論点が取り上げられている。また、玉城デニー沖縄県新知事は地位協定改定を政府に強く求める意向を示している。日米地位協定の改定問題は、「横田空域」管理権問題と沖縄における諸々の米軍基地問題が連動して、今後メディアを通じてクローズアップされていく可能性が大きい。
この問題については、現段階で細かな法律論や技術論を振り回すことよりも、安全保障について日本はドイツやイタリアと異なって「普通の国」ではないという基本的側面を改めて議論する必要がある。日米安保体制を強化することなく、その一部である地位協定についてのみ、日本側の「良いところ取り」を求める改定を求めてみても、米側は既得権を縮小する気にはならないであろう。安倍政権のもと集団的自衛権について大分進展が見られているが、日本が「横田空域」管理権の拡大を求めるためには、防衛努力を更に重ねることが必要である。一方日本がドイツやイタリア並みに米軍を援助し得る法体制を整備するためには、大きな政治的エネルギーと長い時間が必要とされることは否めない。
今必要なことは、現行法体制のもと、財政措置の面でも実務的防衛協力の面でも、日本が負担し得る責任範囲を飛躍的に拡大していく政治的意図を明確にすることである。そのうえで、米軍と自衛隊による在日米軍基地共同使用を全国的に拡大していく努力を倍加し、「横田空域」管理権を含め日本側の責任拡大について米国政府と交渉していくべきである。
日米防衛協力のレビューは専門家のみに委ねることなく、政府は国民的議論ができるような環境を作っていくべきである。沖縄における米軍基地負担軽減問題は、必ずしも日本全体における米軍基地負担軽減に直結するものではない。小手先の議論だけでは羽田新ルートは実現できない。
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