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2019-01-07 23:48
今年の政局は波瀾万丈
杉浦 正章
政治評論家
亥年だからどうなるなどと言う馬鹿馬鹿しい話しは民放正月番組に任せるとして、今年の政局を見通せば内外とも波乱要素に満ちている。首相・安倍晋三が目指す北方領土返還も憲法改正も、具体論に入れば国論は2分3分する。あえて火中の栗を拾い政権の根幹を揺るがす必要があるのかといえば、疑問だ。それよりも統一地方選、参院選をこなさなければならず、まさに正念場だ。野党はここを先途とたたみかける。場合によっては安倍が衆参同日選挙で斬り返す事態も予想される。政治決戦の年になることは間違いない。まず大局を見れば、近い将来国民が現自民党政権維持から野党政権への選択をする可能性はゼロだろう。なぜなら安倍自民党政権の6年は、日本繁栄の6年であり、失業率実質ゼロの状態維持は戦後の政権において存在しない。安倍にとっては赤壁の戦いではないが、天の利、地の利、時の利、人の利があったのであり、その余韻は残る任期3年にも多かれ少なかれ及ぶだろう。6年の実績を見て国民の大勢は、現状維持指向に向かうだろう。
立憲民主党代表枝野幸男は「衆参同日選挙はあり得るとの前提で準備したい」との見通しを新年早々述べている。しかし安倍はよほどの好機と見なければやるまい。よほどの好機とは北方領土問題の大きな進展である。しかし、ずる賢いプーチンが4島を返して、米軍に有利になる極東情勢を認める可能生はゼロであり、せいぜい2島返還の可能性があるが、一部の期待のように4島への足がかりなどにはなりそうもない。2島で打ち切りというのが現実だろう。戦争で取られた領土が全て返ることなど世界史的にも希有なことであり、2島がせいぜいであろう。その2島の是非で総選挙をぶちかませれば、野党やマスコミの絶好の攻撃材料となり、極右も何をするか分からない。現在の改憲勢力で3分の2の議席の維持などはまず不可能となるだろう。北方領土は光明が見えているようで、本筋は依然として無明の闇といってよい状況なのだ。従って対露外交の重要度は2の次3の次でよい。
ここで今年の重要日程をみれば、今月通常国会が招集され、下旬には日露首脳会談。4月には統一地方選挙があり、同月30日には天皇の退位がある。5月1日には新天皇が即位し、改元となる。6月28,29両日大阪で20か国・地域首脳会合(G20)が開催され、中国国家主席習近平が来日する予定だ。6月か7月には参院選挙、10月1日には消費税が10%に引き上げられる。今年の政局展望にとって最大のくせ者がその消費税引き上げだ。なぜなら消費税を引き上げた直後に解散・総選挙をすれば、確実に大敗する。従って総選挙は引き上げのかなり前か、国民の怒りが収まる2020年後半以降しかない。そもそも前回16年の参院選挙は、自民、公明、大阪維新で3分の2を上回った。今回の参院選で自民、公明、日本維新の改憲勢力は90議席弱。3分の2を維持するにはこの90弱をなんとしても死守しなければならない。前回が勝ちすぎているのであり、減少を避けるのは極めて難しいのだ。
こうした事態を回避するためにささやかれているのが、夏の衆参ダブル選挙だ。一種の大ばくちだが、安倍は度胸があるからやりかねない。ダブルについて安倍は「私自身は全くの白紙だ。頭の片隅にもない」と完全否定している。しかし昔から解散と公定歩合に関しては首相の嘘が許されることになっている。元首相野田佳彦も「私も総理大臣になったときに大先輩たちから、解散と公定歩合はウソをついてもよいと、言われ続けた。そうはいっても、ウソをついてよいテーマが特定分野にだけあっていいとは思えなかった。だから、(2012年に)『近いうちに解散』と言った後は、葛藤した。今の安倍(晋三)総理がどう考えているかはわからないが、人それぞれだと思う」と述べている。やるかどうかは別として、今後安倍が「解散は考えていない」と発言したら、やる可能性があるのだなと疑った方がよい。首相が解散で嘘をついて良いのなら、メディアも解散時期については独断と当てずっぽうが許されることになる。もっとも昔民放記者で、ことあるごとに「解散だ~」と叫びまくっているのがいて「解散小僧」と命名されたことがあったが、解散判断には政治記者としての判断の蓄積と洞察力が不可欠であり、解散小僧だけはいただけない。しかし、夏以降は何があってもおかしくない“危険水域”に政局が突入すると心得た方がよいことは確かだ。
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