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2019-01-15 18:32
「藪の中」へ入るゴーン氏再々々逮捕
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「東京地検特捜部は21日、2008年に私的な投資で生じた損失を日産自動車に付け替えたとして、会社法の特別背任の疑いで、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(64)=金融商品取引法違反の罪で起訴=を再逮捕した。認否は明らかにしていない。ゴーン容疑者の逮捕は3回目。特別背任罪の公訴時効は7年。海外にいる期間は時効が停止されるため、特捜部はゴーン容疑者の渡航歴を調べ、時効が成立していないことを確認した」(2018/12/21 共同)特別背任は「会社法」に規定される犯罪。株式会社の役員などが、自己もしくは第三者の利益のために会社に損害を加える罪とされる。報道によれば、ゴーン氏の資産管理会社と銀行の間の金融派生商品取引契約で多額の損失が発生したため、2008年10月、契約の権利をゴーン氏の資産管理会社から日産に移し、約18億5千万円の評価損を負担する義務を日産に負わせた疑いだという。 この「投資」行為は上記のように2008年頃と相当に古い話で、ゴーン氏が国外に居た時間は時効期間にカウントされないというルールによって時間が差し引かれるためにようやく嫌疑が問えるという、なかなか微妙な橋を特捜部は渡ったようである。この微妙さがこの国の司法権力の陰険さ、もっとはっきり言えば「冤罪発生源」になっているのではないか。 特捜部は、ゴーン氏を最初に逮捕した時点では、2017年までの5年間の役員報酬の虚偽記載を根拠として逮捕した。そして、事実上中身の全く同じ容疑を2018年以降直近までの異なる期間に適用して再逮捕するという時間稼ぎをこれまでにやってきた。これはどうみても悪意に満ちたやり方ではないか。人権思想の確立している先進国では流行らないやり方であろう。こういう特捜の手法から勘ぐれば、この三回目の逮捕容疑もすでに把握していた嫌疑を、東京地裁の拘留延長不許可の判断によって思いがけず予定より早く苦し紛れに出してきたのではないか?と疑われる。こういう、被疑者にとって希望の光が射してきた後に絶望を繰り返すことで容疑者の心が折れていく。それこそが過去、一連の冤罪の発生源となってきたのではなかったか。 これは昨年クリスマスを目前に控えた日であった。東京地検特捜部は、「神の不在」を実証しようというのでもあるまい。こういうひっくりかえしもっくりかえして逮捕・再逮捕を繰り返す非効率捜査、これに加えて「代理監獄システム」、これらはこの国の司法行政の無能の裏返しだ。日本の常識は世界の非常識、沢山ある国辱の中でも、これは特に重要な一つであろう。
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