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2019-02-13 11:23
ロシアとの北方領土交渉は“水入り”が必要ではないか
飯島 一孝
ジャーナリスト
安倍首相とプーチン大統領は1月22日、モスクワで首脳会談を行なったが、焦点の北方領土交渉では進展がないばかりか、入口から意見が合わなかったようだ。ロシアの有力紙コメルサントは「安倍首相は期待を抱いてやって来たが、全てが消えてしまった」という見出しをつけて首相の落胆ぶりを表していた。会談は予定の2時間を約1時間オーバーし、領土問題を含む平和条約について十分協議したはずだが、会談後の共同記者発表でプーチン氏が言及したのは大半が日露の経済問題だった。特に日露貿易を活発化するため、貿易額を数年で1・5倍に増やすほか、液化天然ガス(LNG)プロジェクトへの協力を求めたもので、経済協力をごり押しする内容だった。
こうしたプーチン氏の発言についてコメルサント紙は「大統領は安倍首相に(日本側が要求するとみられる)2島への期待とははるかに違うということを露骨に理解させようとした」と書いていた。つまり、プーチン大統領ははじめから2島返還など考えていないことを安倍首相にはっきり示したということのようだ。これだけ悪し様に言われては、安倍首相も腹がたったのではないだろうか。それでも首相は河野外相らに「(平和条約交渉を)さらに前進させるよう指示した」というが、このように入口論でつまづいているようでは前進は当分期待できない。
今回の交渉劇は、プーチン大統領が交渉担当に指名したラブロフ外相とタッグを組んで、日本側の期待度をできるだけ下げ、日ソ共同宣言の「2島マイナスアルファ」を狙っているに違いない。安倍首相は自ら「プーチン氏と私の間で決着させたい」と発言、自分の任期中に解決させたいと前のめりになっている。だが、プーチン氏の方が任期が2年長く、分が悪い。ロシア側はそこまで見通して強気になっているのだろう。
この際、しばらく冷却期間を置く"水入り”にしたらどうだろうか。安倍首相は2月中に外相会談を行って前進させるよう指示したというが、今のまま突き進んでも向こうの術中にハマるだけではないだろうか。敵は百戦錬磨のタフなネゴシエーターだ。こちらもじっくり戦略を練って進めるべきだろう。
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