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2019-04-08 21:11
安保法3年、同盟・平和強化に貢献
鍋嶋 敬三
評論家
安全保障関連法制の施行(2016年3月29日)から3年が経った。新たな日米物品・役務相互提供協定(ACSA)の発効(2017年4月25日)とともに、日米同盟の強化、国際的な平和と安定に貢献していることが実績で示された。岩屋毅防衛相は記者会見で「日米同盟はより強固になり、抑止力・対処力も向上した。地域の安全に貢献する能力も非常に高まった」と評価した。日本を取り巻く安全保障環境はますます厳しい。北朝鮮の核・ミサイル脅威は2回の米朝首脳会談の不調から「完全な非核化」に向けた実質的進展はない。日本周辺で中国やロシアの軍事活動は活発化している。中露の駆逐艦や哨戒機、爆撃機の日本への接近が4月初めの5日間で連日のように5回報告され、自衛隊機が緊急発進(スクランブル)した。
「同盟の抑止力強化」の柱が米軍防護である。「防護」について防衛省は、日本防衛に資する活動として(1)弾道ミサイルの警戒を含む情報収集・警戒監視、(2)重要影響事態の際の輸送、補給、(3)共同訓練ーを挙げている。このための政策措置に加え、新ACSAが迅速な物品・役務の提供を容易にし、協力の効果を上げてきた。岩屋防衛相は武器防護の実績として2017年は2回だったのが2018年には16回と大幅に増えたことを明らかにし、これが「同盟の抑止力強化につながってきている」と述べた。防護の対象としてB52戦略爆撃機や補給艦が含まれると伝えられた。米軍機・軍艦への防護活動は自衛隊との共同作戦行動であり、日米が目指す統合作戦能力の向上に大きな役割を果たしている。
「国際社会の平和と安定」という2本目の柱は国際連携平和安全活動の実施だ。政府はエジプト東部シナイ半島で国連に代わる平和維持活動を実施している国際機関である多国籍軍監視団(MFO)への自衛官2名の派遣を4月2日の閣議で決定した。1979年のエジプト・イスラエル平和条約に基づいて米国の仲介で国連PKOに代わるものとしてMFOを設立。日本は1988年以来、30年間にわたって財政支援を続けてきた。日本への高い評価からMFOが要員の派遣を要請、政府はMFOの活動の中立性、当事国の同意などの条件を満たしているとして派遣を決めた。政府は「人的な協力を果たす」ため、司令部要員として4月19日から約半年間の派遣を決めた。シナイ半島への派遣は少人数ながら、国際的に日本のプレゼンスを高める効果は大きく、日本の外交力を強化することにつながる。
米国のトランプ大統領は北大西洋条約機構(NATO)やアジアの同盟国に対して、軍事費負担の大幅増額を強硬に要求、米欧関係の緊張を招いている。しかし、欧州やアジアに展開する米軍(基地)がその国だけでなく、米国の対外戦略に大きな利益をもたらしていることを「敢えて」無視している。そこには選挙民向けの「カネの節約」効果をアピールする単純な「取引」思考しかない。在日米軍の負担増も要求を強めてくるだろう。しかし、在日米軍(海兵隊、空軍、陸軍、横須賀の第7艦隊)は西太平洋で北朝鮮、中国、ロシアの軍事的脅威に対処する戦略的配置の最も重要な駒である。4月下旬にトランプ氏と首脳会談を予定している安倍晋三首相は、日本が米国のインド太平洋戦略上、極めて重要な位置を占め、米軍基地によって国民が相当な犠牲を払い、同盟国の中でも大きな財政的な負担をしていること、安保関連法制の3年間の実績で同盟の抑止力を強化し、それが米国の軍事戦略上も大きな利益をもたらしていることを知らしめ、トランプ氏の理解を深めさせる必要がある。
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