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2019-07-05 19:13
日露平和条約交渉は「対話継続」が関の山
飯島 一孝
ジャーナリスト
安倍首相とプーチン露大統領の首脳会談は6月29日夜、大阪市内で行われたが、北方領土問題を巡る平和条約交渉は進展がなく、「対話継続」で合意するのが精一杯の状態だった。今後、安倍政権が目論んだ2島返還の戦略立て直しを迫られるのは必至の情勢だ。この日の首脳会談後の共同会見で、安倍首相は平和条約締結問題で「乗り越えるべき課題の輪郭は明確になってきている」と語り、いかにも進展があったかのような発言をした。
だが、プーチン大統領は「この対話は両国にとって簡単でなく、細心の注意や辛抱強さを要する問題である」と、交渉の困難さを強調し、「この対話は継続される」とだけ述べた。今後の交渉の見通しや合意の期限については言及せず、両首脳の交渉への意気込みの違いが浮き彫りになった。これで、安倍首相が目指した北方領土4島のうちの2島返還での合意は事実上、頓挫した。安倍首相の任期が今後伸びるかどうかはともかく、プーチン大統領の権力基盤も揺らぎつつあり、大統領の任期中の解決も危うくなってきた。
それでも安倍首相は北方領土問題の任期中の解決に固執するのか、しばらく様子を見るのか、思案のしどころだろう。一方のプーチン大統領は、ロシアの安全保障上の観点から日米同盟への危惧を前面に打ち出し、日本側に圧力を掛けるとともに、ロシアとの経済協力強化に向けて、日本側を牽制している。今後もこの方針に大きな変化はないと見られ、平和条約交渉は当面、開店休業状態になるのではないだろうか。
日本の政治状況はすでに参院選に集中していて、選挙戦の焦点は安倍政権の失態から始まった年金問題に絞られつつある。野党側は年金問題と消費税増税問題を絡めて与党を追い込む戦略と見られるが、安倍政権としては憲法改正問題に焦点をずらしたいところだろう。だが、せっかく盛り上がってきた北方領土問題の解決方法について、与野党とも論戦を続けて欲しい。外交は百年の計を考える重要なテーマであり、今後の世界情勢を考えるきっかけにもなるからだ。
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