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2007-07-25 10:38
注目すべき米中関係の行方
鍋嶋敬三
評論家
日本にとって同盟関係を結んでいる米国は「外交の基軸国」である。中国とは安倍晋三政権の下で首脳の相互訪問が軌道に乗り「共通の戦略的利益に立脚した互恵関係」を目指すところまできたが、台湾問題、東シナ海のガス田開発など鋭い対立が解けたわけではない。米国と中国との関係がどのような方向に進むかは日本外交に大きな影響を与える。1971年7月のニクソン大統領訪中発表は日本政府に「青天の霹靂(へきれき)」となったが、翌年の日中国交回復への契機にもなった。対テロ戦争、経済統合などグローバルな課題に直面する世界で日米関係も日中関係も、米中関係の行方を度外視しては成り立たない。
このところ、ブッシュ政権の下で積極的な対中対話が進められている。ポールソン財務長官が2006年秋に訪中して提唱した米中戦略経済対話は既に2回開かれた。今年5月のワシントンでの対話には米国から17人、中国から15人の閣僚級高官が出席した。国務省主催の米中上級対話も2005年から始まり、軍事交流も再開された。
最近の米中の動きの背景について米議会調査局(CRS)の報告書は、中国の世界における加速度的な興隆が米国の世界的な影響力に重大で長期的な意味を持つためだと指摘した。米国の安全保障上の関心は中国の軍事力の増大と不透明さにある。さらにエネルギー、各種資源獲得など経済活動の増進と政治的影響力の拡大を目指す中国がこれまで米国が圧倒的に優勢だった地域や同盟国にまで手を伸ばしていることに強い警戒感を示している。
中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)と自由貿易協定を結び、2010年までの完全な貿易の自由化を目指す。ASEANの一員であるミャンマーの人権侵害に対する米国提案の国連安全保障理事会決議案も中国が拒否権を発動して葬り去った。中国はインド洋への唯一の出口になる軍港を同国に建設中という。米国のアジア、中東戦略へくさびを打ち込む一環だろう。
中国に対してどのような政策を取るべきか。報告書によると米国内でも主張が分かれている。中国の経済的、政治的勃興は避けられないから協調すべきとするグループ。逆に中国に対抗するために同盟関係の強化、活発な軍事的プレゼンスの維持が必要とする主張。米国と同盟国間に亀裂を生じさせようとする中国を外交的、経済的に封じ込めつつ、中国の体制内の変化を促そうとする立場もある。民主党が議会の主導権を握り、レームダック化したブッシュ政権の中国政策は協調と対立の間を揺れ動くことになる。日本外交が対米、対中の二国間関係にだけ焦点を合わせていては米中関係のはざまに埋没してしまうだろう。
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