「米外交の敵は国内にある」という主張はトランプ以前のオバマ民主党政権の時代にもあった。6年前の本欄でも取り上げたが、議会のねじれ(現在とは逆に上院は民主党、下院は共和党が多数)のために、予算をはじめ重要法案が通らず統治機能が麻痺した。オバマ大統領が中国牽制策とした「アジア・リバランス(再均衡)」を最大の外交課題としたにもかかわらず、2013年秋、EASなどアジア歴訪を取りやめ中国有利の情勢を自ら作り出す戦略的失策を演じた。トランプ大統領が安倍晋三首相に習って「インド太平洋戦略」を打ち出しながら、首脳会議を欠席して中国有利の情勢を作ったのは偶然であろうか。フォーリン・アフェアーズ誌を発行する外交問題評議会のR.ハース会長が当時、著書Foreign Policy Begins At Home(2013年)の中で、「米国の安全保障と繁栄の最大の脅威は海外からではなく、国内に在る」と喝破した。6年後の今日、「脅威は政権そのものに在る」と言うべきか。