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2020-01-27 13:59
近代日本外交史からみた安倍対韓外交
萩原 孝夫
無職(年金生活者)
ここしばらく、日韓関係が緊迫の度合いを高めています。新聞・テレビ等では、韓国の反日・排日・侮日運動が毎日のように報道されています。そうした中、日本の安倍政権は安倍政権なりに対韓外交を展開しています。私が観察する限りでは、現在の安倍政権の対韓外交は、戦前の日本外交からいくつかの教訓を引き出しているように思われます。そうした側面について、故岡崎久彦氏の著した『外交官とその時代』シリーズを手がかりに辿ってみたいと思います。
第一は「堅実に行き詰まる」という教訓です 。同氏の 『幣原喜重郎とその時代』の第十三章には次のような文章がでてきます。「重光は、帰朝後日中は衝突路線にあり、何とかすべきであるが、『その行き詰まりがどうしてもやむをえないことならば』『堅実に行き詰まる』ということでなければならないと意見を具申し、幣原外相と、大臣室で、『堅実に』を合言葉にして固い握手をして別れ、帰任した。(中略)『行き詰まる』ということは対決状態になるということであり、もし、外交的にせよ軍事的にせよ対決に至ったときに、日本の立場が国際的にみて批判の余地がないようにしておこうということである」。そこで安倍首相です。安倍首相は、今年1月20日の施政方針演説で次のように述べています。「韓国は、元来、基本的価値と戦略的利益を共有する最も重要な隣国であります。であればこそ、国と国との約束を守り、未来志向の両国関係を築き上げることを、切に期待いたします」。現在、日韓関係は「元来あるべき関係逸脱してしまった」という意味において外交的に行き詰っているわけですが、そうした状況をおいて、安倍首相は「国と国との約束を守り」との正論を国際社会にむけて訴えることにより、「国際的にみて批判の余地がない」すなわち「堅実に行き詰る」ようにしているといえます。
第二は「米国を味方につける」という教訓です。『幣原喜重郎とその時代』の第七章から引きます。「(ワシントン体制が守れるためには)アメリカは『機会をとらえて、中国の国際的無責任主義には同意できないと非公式に示唆すべきであった』のに対して、アメリカはむしろ中国の主張に同調する傾向であったため、『ワシントン会議の閉会後五年もたたないうちに極東における国際協調の思想はもろくも崩れてしまった』」。この時、米国は日本を味方してくれなかったわけですから、このエピソードはいわば反面教師の意味を持ちます。逆に現在、日本は米国と緊密な同盟関係にあります。その中で、エスパー米国防長官は昨年11月に訪韓し、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効を回避するよう迫ったわけですが、これは米国が韓国に対し「国際的無責任主義には同意できない」と伝えた、ということでしょう。同盟とはありがたいものです。
第三は「大きな考え方をとる」という教訓です。『重光・東郷とその時代』の第十三章から引きます。「はじめからこういう条件ならば、支那事変などは何度でも解決している。重光によれば、これが成功した一つの理由は『大戦に突入して以来日本人の視野が広くなり、日本の使命はアジアにあり』『その使命はシナと共同の責任であり』、『日本がシナでシナ人の好まざる目前の権益を力をもって設定することは、日本の真の使命に反する』という『大きな考え方』をするようになったからである。(中略)『日本は、東亜の解放、アジアの復興こそは、日本の使命でなければならぬことを悟り、日本人は漸次悪夢から覚めてきた』のである。その『悪夢』とは『シナ問題のみに頭を突っ込んで、蝸牛角上の争いに没頭するというコセコセした』考え方であった」。さて、安倍首相は日韓関係あるいは日中関係について、必ずしも二国間関係だけの文脈では考えていないように思われます。むしろ「地球儀を俯瞰する外交」を志向しつつ、われわれ国民にむかって、日韓や日中のみに「頭を突っ込」むことは避け、「視野」を広げようとしているように思われます。同時にそれは、北朝鮮の拉致・核・ミサイル解決にむけた日米韓協調が「真の使命」であることを十分に意識したものといえるでしょう。
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